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2046年W杯、決勝戦の地はジャカルタ?21年後の経済力から予測

FIFAワールドカップトロフィー 写真:Getty Images

7月18日付の複数の報道によると、日本サッカー協会(JFA)が東アジア連盟(EAFF)およびASEANサッカー連盟(AFF)と連携し、2046年FIFAワールドカップ(W杯)の共催を視野に入れた協議を進めていることが明らかになった。

正式な招致表明ではないものの、構想段階として、開催候補国には日本、韓国、中国、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポールなどが挙がっている。実現すれば、日本にとっては2002年の日韓共催大会以来、実に44年ぶりのW杯開催となる。

これを受けてサッカーファンの間では、「国立競技場で決勝戦を開催してほしい」という声がネット上で広がっている。報道によれば、JFAもこの“国立決勝プラン”を一案として検討しているとされる。

なお、現在の国立競技場は2019年11月に完成し、2021年の東京オリンピックではメインスタジアムとして使用された。観客収容数は6万7,750人だが、FW杯の決勝戦開催には原則として8万人以上の収容能力が求められており、実現には改修や仮設席の設置などの対応が必要となる可能性がある。

これに対応するため、国立競技場のトラック部分に仮設の可動式観客席を設置することで、FIFAの求める8万人収容の基準をクリアできる見込みだと報じられている。スタジアムを運営するジャパンナショナルスタジアム・エンターテイメントの関係者によれば、「8万席に対応するプランや図面、設置案はすでに存在する」とされ、技術的には対応可能との見方も伝えられている。

しかしここで一度、足を止めて未来を想像してみたい。大会の開催は21年も先の2046年だ。その時、日本や韓国、中国といった現在のアジアの中心国が、果たして今と同じような国力や大会開催能力を維持しているとは限らない。一方で、インドネシア、タイ、マレーシア、シンガポールといった東南アジア諸国は、近年目覚ましい経済成長を遂げており、今後さらに国際的な影響力を高めていく可能性もある。

ここでは、日本・韓国・中国、そして東南アジア諸国の21年後を展望しながら、2046年のFIFAワールドカップがどのような大会になるのかを予測してみたい。


中国代表のサポーター 写真:Getty Images

2046年時点の東アジアの勢力図は……

まず、2046年時点での開催地候補国の「人口」「平均年齢」「GDP」「1人当たりGDP」「貿易収支」「外貨準備高」「経済成長率」「政治・経済力」などの変化はどう予測できるのか。それらのデータから、W杯開催の中心地(開幕戦や決勝戦)となるのはどの国と予測できるか。

2026年大会から出場国が48に拡大し試合数は104に増加するため、スタジアムの数も14~16が必要となる(2026年は16都市使用予定)。過去大会の実績やFIFAのスタジアム要件を踏まえると、開幕戦・決勝戦には約8万人規模、準決勝には6万人規模、その他の試合には4万人規模の収容能力を持つスタジアムが求められるほか、屋根の設置範囲やバリアフリー設備など細かな基準も設けられている。

日本:21年後の人口と高齢化の進行

日本は2050年までに2度目のW杯開催を視野に入れてきたものの、単独開催は大会規模の拡大により現実的には困難だ。FIFAの方針では大陸持ち回り開催が慣例で、2034年大会のサウジアラビア開催後、2046年大会が現実的なターゲットになるとされていた。東アジアの共催計画は2025年3月のEAFFとAFFの会合で具体化。しかしながら、大会の中心国が日本になるという保証はどこにもない。

人口は2024年の約1億2,435万人から2046年には約1億758万人と大幅に減少すると予測され、(出典:国立社会保障・人口問題研究所)、平均年齢も2024年の約48.4歳から2050年には約51.4歳に上昇すると予測されている(出典:国連人口予測)。既に日本は労働力の減少と資材の高騰がインフラ整備に暗い影を落としているが、2002年日韓大会で建設されたスタジアムも建て替え時期を迎える。建て替えるのであれば、ファンのみならずFIFAも当然、サッカー専用スタジアムを望むだろう。しかし、21年後の日本に、W杯用のスタジアムを新設するだけの財政余力はあるのだろうか。

安全な治安と2002年大会の開催経験でFIFAからの信頼性が高いが、高齢化による経済縮小が課題だ。特に地方の過疎化が進み、そこに新たなサッカー専用スタジアムを建設するには乗り越えるべきハードルが多いため、東京や大阪でグループステージのみを行う補助的存在として大会開催に貢献するというプランが現実的とは言えないだろうか。

韓国:日本と似た問題、人口動態が…

韓国は日本以上に少子高齢化に悩まされている。その人口は2024年の約5,100万人から2046年には約5,000万人前後で推移すると予測されている(出典:韓国統計庁)。平均年齢も44歳から50歳前後に上昇するとされている。ソウルワールドカップスタジアム(収容人員約6万6,700人)や釜山アジアドスタジアム(収容人員約5万3,900人)はFIFA基準を満たすが、改修工事を施すとすれば、資金面での不安が生じる。日本と似た問題を抱えているのだ。

韓国も同様に治安面の問題はなく、2002年大会の開催経験がある。財政面では東南アジア諸国と比べて優位にあるものの、共催という形態や他国との調整によって開催規模が限定される可能性もあるため、資金力の面で東南アジア諸国に劣る。ソウルや釜山でのグループステージ開催にとどまる可能性が高いだろう。

中国:主導的役割は徐々に後退

中国は長年続いた「一人っ子政策」の影響で人口増加が鈍化し、国連の人口予測や中国国家統計局のデータによると、2024年の約14億1,000万人から2046年には約14億人台を維持するとされている。平均年齢は39歳から約45歳へ上昇が見込まれる。かつて10%を超えた経済成長率は近年鈍化し、不動産バブルの崩壊や過剰債務の問題も指摘されている。北京や上海は世界に誇る大都市でインフラは強力だが、都市部と地方の格差は広がるばかりで、アジアにおける主導的役割は徐々に後退していくものと予測されている。

中国は、開催地がサウジアラビアに決まった2034年大会に立候補すると予測されていたが、その最中に不動産バブルが崩壊し、“サッカーどころではない”状態に追い込まれ、招致活動を断念。一時は世界を席巻した中国スーパーリーグも急速に競争力を失った。

北京や上海などの都市部は経済力とインフラが強いが、中国政府の国際的信頼と地政学的緊張が課題となる。オリンピックの夏季大会(2008年)との冬季大会(2022年)を成功させた唯一の都市である北京、そして上海でのグループステージ開催が現実的な落としどころではないか。

オーストラリア:推移に安定性はあるが…

オーストラリアの人口はオーストラリア統計局の予測によると、2024年の約2,700万人から2046年には約3,200万人に増加すると見込まれている。平均年齢は38歳から約40歳へと緩やかに上昇し、比較的安定した推移が予想される。シドニーやメルボルンなど主要都市の高度なインフラは強みとなる一方で、東アジアや東南アジアからの地理的距離が大会開催における課題となる可能性がある。

政治的安定性とシドニー五輪(2000年)の開催実績があるが、地理的な問題は如何ともし難く、グループステージ数試合の開催にとどまるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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