若手選手 クラブワールドカップ

クラブW杯で活躍した二世選手6選。偉大な父を超えられるか

ジュリアーノ・シメオネ(右)フランシスコ・コンセイソン(中)リアム・デラップ(右)写真:Getty Images

日本時間6月15日、アメリカで開幕したFIFAクラブワールドカップ2025は、いよいよ大詰めとなった。32チームによる新フォーマットが導入され、世界中のサッカーファンを魅了してきた今大会は、7月14日午前4時(日本時間)に決勝戦(パリ・サンジェルマン対チェルシー)を控える。

欧州各国リーグの終了後の開催となった今大会では、主力選手のコンディションを考慮して若手に出場機会が与えられるケースも多く見られた。中でも注目されたのが、「偉大な父を持つ二世選手」たちだ。父親の名声という重圧を背負いながらも、自身の実力でピッチに立ち、将来を嘱望される存在となっている。

ここでは、クラブW杯で存在感を放った6人の二世選手にスポットを当て、彼らのパフォーマンスと、父を超える可能性について掘り下げていく。


フェデリコ・レドンド 写真:Getty Images

フェデリコ・レドンド(インテル・マイアミ)

世界一優雅なボランチだった父
父:フェルナンド・レドンド

アメリカMLS(メジャーリーグサッカー)のインテル・マイアミに所属する22歳のMFフェデリコ・レドンドは、父と同様にアルゼンチンの名門アルヘンティノス・ジュニアーズでプロキャリアをスタートさせた。

父のフェルナンド・レドンドは、スペインのテネリフェ(1990-1994)を経て、レアル・マドリード(1994-2000)で一時代を築いた伝説的な名ボランチだ。優雅なボールコントロールと戦術眼で知られ、1990年代から2000年代にかけて欧州CL(UEFAチャンピオンズリーグ)を2度制覇している。

フェデリコはフェルナンドの二男で、同じく中盤の選手だ。クラブW杯では全4試合に出場、うち2試合ではフル出場(先発3試合、出場時間276分)。FWリオネル・メッシやFWルイス・スアレス、MFセルヒオ・ブスケツ、DFジョルディ・アルバといった名選手たちとの競演を果たした。

フェデリコのプレースタイルは、父フェルナンドと似たポジションながら、守備だけでなく攻撃にも貢献できる現代的な解釈で進化している。彼自身「父のプレーをビデオで何度も見てきたが、自分は自分の道を進みたい」とメディアのインタビューで語っている。クラブW杯での活躍は、彼が父親の幻影を脱しつつある証拠だろう。ただ、父のような世界最高峰のキャリアを築くにはさらなる経験が必要だ。


リアム・デラップ 写真:Getty Images

リアム・デラップ(チェルシー)

ロングスローが武器だった「人間発射台」のDNA
父:ロリー・デラップ

リアム・デラップは、プレミアリーグ注目の若手ストライカーだ。父ロリー・デラップは、ストーク・シティ(2006-2013)などで活躍したMFだったが、注目されたのはパスやドリブルなどの足技ではなく驚異的なスローインの飛距離。一説には40メートルとも言われ、FKやCKのようにゴール前に放たれることで「人間発射台」の異名を取った。学生時代、陸上大会のやり投げで優勝した経験を持つその“強肩”は相手DFをおののかせた。

リアムは父とは違い、今季加入したチェルシーでFWとして背番号9を着け、ゴール前の嗅覚とフィジカルを武器にしている。クラブW杯では準決勝までに1得点を挙げ(5試合出場)、チームの決勝進出に大きく貢献した(準決勝は累積警告のため出場停止)。

今ではロングスローを戦術に組み込むチームも多くなったが、ロリーのスローインは、当時では珍しい「飛び道具」だった。リアムのクラブW杯でのパフォーマンスは、父のユニークな能力とは異なる形でストライカーとしての評価を高めた。今後、プレミアリーグでのレギュラー定着が、偉大な父を超える第一歩となるだろう。


ジュリアーノ・シメオネ 写真:Getty Images

ジュリアーノ・シメオネ(アトレティコ・マドリード)

「闘将」の息子はスピードスター
父:ディエゴ・シメオネ

アトレティコ・マドリードFWジュリアーノ・シメオネは、父で、アトレティコの監督でもあるディエゴ・シメオネの三男。父がセリエAラツィオ所属時代(1999-2003)にローマで生を受けた22歳だ。

父は3か国のべ8クラブを渡り歩き、アルゼンチン代表としても活躍した名選手だ。現役時代同様、感情むき出しでピッチサイドから選手を𠮟咤激励する情熱のみならず、戦術家としても知られ、選手として(1995/96)も、監督として(2013/14、2020/21)もアトレティコをラ・リーガ優勝に導いた。

ジュリアーノは攻撃的ウイングまたはフォワードとして赤丸急上昇中だ。アトレティコはクラブW杯グループリーグで2勝1敗ながら得失点差で敗退してしまったが、ジュリアーノは全3試合に先発出場(うち2試合はフル出場)し、チームに欠かせない存在であることを示した。

2025年7月の記者会見でジュリアーノは「父の指導は厳しいが、それが自分を成長させている」と語っている。この発言は、ピッチに入れば“父子鷹”など関係なく、厳しく指導することで成長を促していることを裏付けている。

ディエゴの戦術眼を受け継ぎつつ、伸び盛りのジュリアーノは、父の監督下でさらに飛躍するだろう。ただし、父の名声ゆえのプレッシャーは大きく、昨季のラ・リーガやクラブW杯での活躍は彼のキャリアのスタート地点に過ぎない。

Previous
ページ 1 / 2

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

筆者記事一覧