
Jリーグのサポーターにとって、アウェイ遠征(応援しているチームのホームスタジアム以外で開催される試合を観戦するために、その試合会場まで遠征すること)は楽しみの1つだ。Jクラブ数も60となり、北は北海道から南は沖縄県まで、全国どこでも応援に行くサポーターもいる。
中継を見ながら「この人たち、どうやって遠征費を工面しているのか…」と感じることもあるだろう。特に北海道コンサドーレ札幌とFC琉球のサポーターは、遠征となれば飛行機移動が必須だ。いくら日本の国土が狭いとは言え、その熱意と行動力には頭が下がる思いだ。
しかし世界に目を向けると、「地球上ならどこまでも付いていく!」とばかりに、超遠距離のアウェイ戦に乗り込んでいくサポーターが存在する。ここではそんなサポーターに光を当て、アウェイ遠征の「キツさ」とともに、彼らの情熱を称賛したい。

世界一広大な国土のロシアでは…
まずはロシアのケースだ。2022年から続くウクライナ侵攻への制裁として、現在FIFA(国際サッカー連盟)やUEFA(欧州サッカー連盟)主催大会から除外されているが、国内リーグ(ロシア・プレミアリーグ=RPL)は開催されており、2024/25シーズンはFCクラスノダールが初優勝を飾った。
代表チームでは、元代表DFアレクセイ・ブガエフがウクライナで戦死(2024年12月29日)するという出来事もあったが、国際Aマッチウィークには敵対国以外の国の代表チームとの国際親善試合を開催している。また、敵対国であるアメリカMLS(メジャーリーグサッカー)のアトランタ・ユナイテッドでは、ロシア代表MFアレクセイ・ミランチュクがレギュラーとして活躍している。
そんなロシアのサッカー事情だが、国土が世界一の広さを誇るが故に、サポーターのアウェイ遠征は非常に大変である。地理的距離に加え、移動手段やインフラ、気候、時差などの要因が影響し、それは時として選手のコンディションにも及ぶ。

モスクワからウラジオストク、飛行機でも約9時間
ロシアの強豪クラブは概ね、首都モスクワや、第2の都市サンクトペテルブルクなど、欧州寄りの西部に集中しているが、過去には遠く離れたウラル山脈付近や極東のシベリア地域に本拠地を置くクラブがRPL昇格を果たしたことがある。
代表的な例として、現在セカンドディビジョン(3部)に身を置くルチ・ウラジオストクが挙げられる。中国と北朝鮮との国境近くのウラジオストクを本拠地とし、2006/08シーズンにはRPLに所属していた。
ウラジオストクはモスクワから東に約6,400キロ、飛行機でも約9時間。シベリア鉄道では約1週間かかり、7時間の時差もある。東京やソウル、北京の方が近く、実際ロシアによるウクライナ侵攻前には成田空港と関西空港からウラジオストクへの直行便も飛んでいた(ちなみにフライト時間は約2時間26分)。気候も厳しい。夏は30度を超える気温で湿度も高く、冬はマイナス15~20度まで冷え込む。ウラジオストクに限った話ではないが、RPLを開催するスタジアムでは人工芝使用が許可されている。
例えばウラジオストクからモスクワ遠征となれば、当然ながら高額な飛行機代のみならず、宿泊費が必要となる。体力も消耗する。サポーターは日程調整が難しく、経済的負担も大きい。それはモスクワに本拠地を置くスパルタク・モスクワやCSKAモスクワのサポーターがウラジオストクへ遠征する場合でも同じだ。
同様の例としては、ウラル山脈の南のカザフスタン国境近くを本拠とするFKオレンブルグも、アクセスの悪さと移動時間の長さがサポーターに負担を掛ける。冬の寒さも相まって、選手もサポーターも過酷な遠征を強いられる。空港がないわけではないが便数が少ないため、サポーターは長距離バスや列車を使うことが多く、時間と体力の消耗が大きい。
コメントランキング