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横浜FMにも一縷の望み?監督2度交代を経てJ1残留に成功したクラブ

アンドレス・イニエスタ(写真左)と吉田孝行監督(写真右) 写真:Getty Images

2022シーズンのヴィッセル神戸

神戸は2022シーズンにもまた、2度目の「2回監督交代での残留」を達成した。この年もイニエスタらスター選手を擁していたが、シーズン序盤から不振が続き、三浦淳寛監督が4月に退任。リュイス・プラナグマ・ラモス代行監督を挟み、後任にミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が就任したが、その守備的な戦術とのミスマッチを起こし7月に解任。吉田コーチが実に3度目の監督代行としてシーズン終了まで指揮を執り、正式に監督に就任し現在に至っている。

同シーズンの神戸は、戦術のミスマッチと選手のコンディション不良が重なり、序盤から苦戦を強いられた。三浦監督時代は攻撃の連動性が欠け、ロティーナ監督の守備偏重のスタイルはイニエスタや元日本代表FW大迫勇也や武藤嘉紀の創造性を生かせなかった。

しかし、吉田代行監督の就任後、チームは攻撃的なスタイルに回帰。イニエスタが躍動し、サイド攻撃を活性化させる戦術が奏功し、終盤に勝ち点を積み上げた。最終節での劇的な勝利により13位まで順位を上げてフィニッシュした。

吉田監督の成功は、選手との信頼関係と戦術の柔軟性にあった。選手の声を聞き、チームの強みを最大限に引き出す戦術を採用。また、クラブのフロントも監督交代のタイミングを迅速に判断し、シーズン終盤の立て直しを可能にした。監督交代のリスクを乗り越え、残留を果たした稀有な例だ。

そして吉田氏が正式に監督に就任すると、2023、2024シーズンとJ1連覇を果たすことになった。


ズデンコ・ベルデニック監督 写真:Getty Images

2012シーズンの大宮アルディージャ

2012シーズンの大宮アルディージャも、2度の監督交代でJ1残留を果たしたクラブだ。この年、鈴木淳監督でスタートしたが、序盤の不振により6月に岡本武行代行監督に交代。その後、ジェフユナイテッド市原(2000-2001)、名古屋グランパスエイト(2002-2003)、ベガルタ仙台(2003-2004)とJクラブでの指揮経験が豊富なスロベニア人指揮官ズデンコ・ベルデニック監督に命運を託した。

ベルデニック監督は、まずフォーメーション変更に着手。3バックから4バックにし崩壊していた守備を立て直した。攻撃面ではシンプルな堅守速攻をベースに、ハードワークと規律を重視し、当時Jリーグ記録となる21戦無敗を記録。降格圏から13位にまで順位を押し上げ、J1残留を達成した。


Jリーグ 写真:Getty Images

成功例と失敗例の違い

Jリーグの歴史を振り返ると、監督を2度交代させても残留に成功したケースは少ない。失敗例としては、セレッソ大阪(2001:副島博志監督/ジョアン・カルロス監督/西村昭宏監督)や川崎フロンターレ(2000:ゼッカ監督/今井敏明監督/小林寛監督)、ジュビロ磐田(2022:名波浩監督/渋谷洋樹監督/フベロ監督)が挙げられる。

成功例と失敗例の違いは、ます後任監督の適応力が挙げられる。成功例では、代行監督が選手の特性を理解し、シンプルで現実的な戦術を採用した。また、成功例に挙げた神戸や大宮では、選手が監督交代の危機を乗り越えるために団結した。一方、失敗例では新監督の戦術がチームに合わず、混乱に拍車を掛ける結果となった。

過去の例によると、監督交代が即劇的な改善に繋がるとは言い切れない。しかも2度の交代となると、チームの戦術や選手のメンタルにさらなる負担がかかり、成功確率はさらに低下する。

神戸と大宮のケースは、監督交代のリスクを乗り越え、チームの団結力で危機を脱した稀有な例だ。特に神戸は、複数回にわたりこの難題を成功させており特筆に値する。監督交代は諸刃の剣だが、適切なタイミングと後任監督の力量次第で奇跡的な残留を可能にすることを、これらの事例は示している。


大島秀夫監督 写真:Getty Images

大逆転のチャンスはまだまだ

横浜FMに話を戻せば、21日に指揮を執る大島秀夫代行監督はJFA Proライセンスを取得しており、このまま後任監督に就任する可能性もあるだろう。ライセンス取得が昨2024年5月であり、初の監督が降格圏に沈むチームでは荷が重すぎるという声も出てきそうだ。

しかしながら、大島監督は2017年から横浜FMの下部組織から指導者キャリアをスタートさせ、クラブOBでもある。現役時はJ1、J2で8クラブを渡り歩き、リーグ、カップ戦通算500試合以上出場。19年もの選手キャリアの中、様々な指導者の下でプレーしてきた経験がある。実力が未知数の新監督を招聘するよりも、現有戦力を把握し、最大化させるのに打って付けの人材にも思える。兄貴分的存在で、選手たちの動揺も最小限に出来るだろう。

幸いシーズンはまだ折り返し地点であり、J1は稀にみる大混戦だ。そして横浜FMは、戦力だけで見ればとても降格するような陣容ではない。日本人監督就任となれば、2014シーズンの樋口靖洋監督(現ちふれASエルフェン埼玉)以来だが、大島監督にチームを託し、まずはメンタル面で落ち着きを取り戻させることが出来れば、選手たちが本来の実力を発揮するのではないかという期待感もある。

大逆転のチャンスはまだまだ残されていると言って良いだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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