
多岐に渡る観客が増えない理由
SC相模原は、RB大宮アルディージャのJ2昇格とY.S.C.C.横浜のJFL降格によって、首都圏におけるJ3唯一のクラブとなった。上京している(J3クラブのある)地方出身者が我が故郷のクラブを応援できる機会を提供できるという意味ではビジネスチャンスでもある。
しかし、ホーム開幕戦の2月22日のJ3第2節(栃木SC戦/1-0)では4,993人を集めたものの、3月1日の第3節(鹿児島ユナイテッド戦/0-2)では1,829人、3月15日第5節(奈良クラブ戦/1-1)1,262人と、2,000人にも届いていない。ホームタウン(相模原市・海老名市・座間市・綾瀬市・愛川町)出身、在学、在住の小学生以下を対象に全てのホーム戦を無料で観戦することができる「こどもフリーパス」を発行しているが、その効果が現れるのはずっと先のことだろう。
仮にも相模原市は全国で20しかない政令指定都市で、神奈川県内では横浜市、川崎市に次ぐ規模を誇る。それにもかかわらず、観客があまり集まらない理由は地理的・社会的な特性も影響している。相模原市は東京都心へのアクセスが良く、ベッドタウンとしての性格が強い。人口の約24.6%が東京へ通勤・通学しており、昼夜間人口比率が88と低いことから、住民の生活やレジャーの対象が市外、特に東京に向かっていることが伺える。故に地元でのスポーツ観戦より東京に遊びに行く傾向が強い。しかしこれは首都圏にあるJクラブ全て同じ条件だ。観客が増えない理由付けとしては弱い。
2008年創立のSC相模原は、わずか6年でJの舞台に上り詰めたものの、後発クラブであることに変わりはない。それはホームタウンを見れば一目瞭然で、周辺は平塚市はじめ神奈川県西部の20もの市や町をJ1湘南ベルマーレに押さえられ、東側には横浜市、川崎市があり、北側は東京都町田市だ。これ以上ホームタウンを広げられない事情があり、スポンサー集めにも影響してくる。
そうなれば、相模原市の都市人口の力に頼るしかないのだが、相模原市民へのPRも十分ではない。26日の清水戦でも、サポーターの数ではアウェイの清水に圧倒され、スタンドもほぼ清水のオレンジで埋め尽くされていた。

魅力的なスタジアム体験の提供へ
現在、SC相模原の運営会社「株式会社スポーツクラブ相模原」の筆頭株主は、IT大手のDeNAで90%以上の株式を取得している。
DeNAはSC相模原以外にも、プロ野球の横浜DeNAベイスターズや、プロバスケットボールBリーグの川崎ブレイブサンダースを所有。DeNAのIR資料や他球団との比較で推定されるベイスターズの総資産は約167億9,100万円(2023年12月期)にも上り、推定年間約50億円以上を投じていると言われている。ブレイブサンダースにも年間約5~15億円を費やしている一方、SC相模原に投入しているのは年間約5~10億円に留まっている。
DeNAの南場智子会長は高校野球もチェックするほどの野球好きで、第三セクター(株式会社横浜スタジアム)が所有していた横浜スタジアムを総額約74億2,500万円で取得した上で「ボールパーク化」を実現させたことは広く知られている。このベイスターズに投じた10分の1でもSC相模原に振り分けてくれれば、少なくともJ2を狙えるチームに変貌させることは可能に思える。オーナーのDeNAもクラブの現状を見て“これで良し”と感じているはずはなく、さらなる投資を求めたいところだ。
地域密着を掲げてはいるものの、まだ地元に根付いているとは言えないSC相模原だが、クラブの歴史の浅さ、近隣クラブとの競合、スタジアムアクセスの悪さ、成績や知名度の低さ、さらに相模原市民の生活に一部となれていない事実などが複合的に影響していると考えられる。
相模原市自体の人口は多いだけに、何かがきっかけで潜在的なファンの掘り起こしが可能になるはずだ。今後クラブが地域との結びつきを強化し、魅力的なスタジアム体験を提供できれば、観客動員増に繋がるポテンシャルは十分にあると言えよう。
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