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いまやJワースト?スタジアムを飛び出した横浜FCサポーターの悪行を考察

横浜FC 写真:Getty Images

サポーター団体によるクレームも

一方、今回問題の起こったJ1第3節の横浜ダービーを配信した『DAZN』で、この試合を実況したアナウンサー下田恒幸氏の前口上に対し、両サポーター団体がクレームを入れ同氏がSNS上で謝罪するに至るということも起こっている。

下田氏の前口上、全文を原文のまま、以下に示す。第三者から見て、ここのどこに横浜FCを蔑む要素があるのかはサッパリ分からない。

「2年ぶりの横浜ダービーです。このダービーが実現するたびに、我々には足を止めて考えるべきことがあります。32年の歴史を積み、いくつもの成果をあげてきたJリーグ。しかし、その黎明期はクラブ経営の見込みの甘さからくる、多くのクラブが存続の危機を経験し、非常に難しい時期がありました。その最も大きな出来事が、1998年に起こったJリーグオリジナルクラブの1つ、横浜フリューゲルスの消滅、横浜マリノスとの合併です」

「Jの強豪同士、よりによって同じ街のクラブの吸収合併は様々な波紋を呼びました。合併に反対して62万人もの署名を集めたフリューゲルスのサポーター。それでも合併は覆らず、サポーターの有志によって立ち上げられたのが横浜フリエスポーツクラブ、つまり今の横浜FCの母体です。フリューゲルスの“F”は横浜マリノスのクラブ名の一部として残されました。とても重い“F”です。フリューゲルスの想いを継承する横浜FCサポーター達は、恐らくその“F”を容認出来ません」

「このダービーは、同じ街のクラブ同士が対戦する単なるダービーマッチではありません。我々の歴史において、常に心に留めておくべき大きな出来事を内包した、Jリーグにおける最も重要なダービー、それが横浜ダービーです」

下田氏は、Jリーグの“黒歴史”を誇張することも矮小化することもなく、事実をそのまま言葉にしたまでだ。

付け加えるならば、旧フリューゲルスサポーター有志によって新たに立ち上げられた横浜フリエスポーツクラブが「横浜FC」を名乗り、いきなりJFLに入会できたこと自体奇跡的なことだ。本来であれば、神奈川県社会人リーグからスタートするべきだった。創立当初からの横浜FCのサポーターは協会やJリーグに感謝こそすれ、過去の事実を述べた下田氏に文句をつける資格などないはずではないか。


浦和レッズ 写真:Getty Images

サポーターの暴走といえば?

クラブに甘やかされ、数多くの悪行もささやかな罰則で許されてきた横浜FCサポーター。自分たちの行為は棚に上げ、他人に対しては徹底的に厳しく当たるのが身に染み着いているように見受けられる。

「サポーターが作ったクラブ」としての反骨精神が間違った方向へ向かい、アウトロー的な応援スタイルが定着したことで、相手チームへのリスペクトやモラルのかけらもないヤジや、暴力沙汰にまで発展している。タチの悪いのは、それを「クラブへの情熱」と勘違いしているところか。

ひと昔前まで、サポーターの暴走といえば浦和レッズだった。しかし、2023年9月2日に開催された天皇杯ラウンド16の名古屋グランパス戦(CSアセット港サッカー場/0-3)の試合後に起こした乱入事件によって、サポーターへの処分のみならず、浦和が翌年の天皇杯出場権を剥奪されるという厳罰に処されたことでさすがに懲りたのか、その後は問題を起こしていない。

そもそも、横浜FCと浦和ではファン・サポーターの数、クラブの規模や歴史、獲得したタイトルに至るまで比較対象になりようもないほどの差がある。浦和サポーターも比べられること自体、不快に感じることだろう。

横浜FCの親会社は、外食産業を主とする小野寺グループだ。人一倍「カスタマーハラスメント」に気を使わなければならない会社の子会社が、カスタマーであるサポーターのやりたい放題を許している状態を良しとしているはずはなく、撤退する可能性も生まれてくる。仮にそれが現実となれば、メインスポンサーを失った横浜FCには、今度こそ本当に「消滅」の道が待ち受けているだろう。

ただでさえ神奈川県にはJリーグクラブが多すぎると言われており、問題行動を繰り返すクラブが1つ消えたとしても、Jリーグ全体の勢力図が大きく変わることはないだろう。Jリーグが「世界一安全なスタジアム」を目指している中で、その方針に逆行する存在は、むしろJリーグ全体の発展を妨げる可能性があるのではないだろうか。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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