
FCクルドの謝罪
そんな中、6日になって「FCクルド」側が要請する形で浦和と協議の場を持ち、FCクルド側はスタジアム規程を知らなかったと説明した上で謝罪した。
筆者はゴール裏サポーター席から“卒業”して久しいが、大旗を持ち込む際に事前の許可が要ることや、「政治的、思想的、宗教的主義、主張または観念を表示しまたは連想させるもの」「選手やチームを応援または鼓舞する目的が認められないもの」(Jリーグ試合運営管理規程第3条から引用)の持ち込みが禁止されていることを、この事件によって初めて知った。
反論の際に差別を持ち込んだことについては、自らの立場を利用した“ズルさ”を感じさせるものの、彼らが本当にこれらの規定を知らなかったという主張に嘘はないだろう。
FCクルドのメティン監督は「子どもたちにプロサッカーの試合を見せたかった。日本語が分からず誤解があったが、協議でお互いに理解できた」と述べ、非を認めた。また「私たちへのヘイトスピーチが増え、このことで浦和と関係が悪化するのは避けたかった」とも述べ、この一件は“手打ち”となった…はずだった。
クルド人支援団体の主張
しかしこの事件はこれで終わらなかった。クルド人支援団体「一般社団法人日本クルド文化協会」が6日、公式Xで浦和側の対応に感謝し謝罪した一方、この事件を報じた産経新聞や一部の地方議員に対し、「子ども達にヘイトスピーチが向かう様に扇動する発信を行い、世論を誤った方向へ誘導した」と批判し、「一方的にSNSで憎悪を煽り続けている」と責任転嫁を図り始め、思わぬ“場外戦”が勃発している。
確かにSNS上ではクルド人差別を含む、様々な意見が投稿されている。しかしこの問題は「FCクルド」のルール違反が事の発端であるということは動かしようがない事実で、これに対しては謝罪もあった。鎮火しようとしている事案に今になってガソリンを掛けるような行為は、巡り巡って、クルド人に対する白眼視に拍車を掛けることを、同協会は知っておくべきでないだろうか。
そう遠くない未来、日本が移民を受け入れる時代がやってくるだろう。来日した多くの移民たちが「日本のサッカーってどんなものなのか」と興味を持ち、観戦に訪れることも予想される。これが世界中で楽しまれているサッカーの強みでもある。
現在のJリーグ会場において、外国人観客にとって取っ付きやすいオペレーションがなされているかと聞かれれば、そうとは言えないだろう。日本国内がグローバル化する中、J各クラブも外国人観客の来場に備えておくべきだろう。今回の浦和の運営担当の対応は機転を利かせ、パーフェクトと呼べるものだったが、他クラブはこれを見本に、準備をしておく必要があるのではないだろうか。
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