
明治安田J1リーグの横浜F・マリノスは2月27日、日産スタジアムで前日に行われたJ1第3節の横浜FC戦(0-0)で試合終了後にゴール裏から自軍の選手に向けて中指を立てた観客1人に対し、侮辱的行為として無期限の入場禁止処分を科した。
また、清水エスパルスは25日、東京ヴェルディとの開幕戦(16日/国立競技場/1-0)で禁止エリアで大旗を使用した清水サポーター3人に対し、会場運営ルールの違反とし、1人を5試合(アウェイ戦含む)の入場禁止、2人を2試合の入場禁止処分とした。
開幕早々、問題サポーターが続出していることが明らかにされたが、ここではサポーターの違反行為の妥当性を検証するとともに、これらの行為にどう対処するべきかを示していきたい。

中指1本で「無期限入場禁止」は厳しすぎでは?
2016年、J1川崎フロンターレ対大宮アルディージャ戦(9月17日/2-3)後、川崎のサポーターが大宮の選手バスを囲んだトラブルを起こし、該当サポーター5人に5試合の入場禁止処分が科された。2018年には、浦和レッズ対ガンバ大阪戦(3月14日ルヴァン杯/1-4)で浦和サポーターが紙コップをピッチに投げ入れ、約1か月間の入場禁止処分が下された。
「世界一安全なスタジアム」を標榜するJリーグは、あらゆる違反行為を徹底的に取り締まる方向性を示しているが、バス囲みやピッチへの物の投げ入れという、選手に危害が及ぶ可能性のある行為については理解できる。
しかし、今回の横浜FMの中指1本で「無期限入場禁止」は、やや厳しすぎやしないかとも感じる。
横浜ダービーで起きたこの出来事、横浜FCを格下と見下す横浜FMのサポーターが、スコアレスドローに終わったことで、不甲斐ないチームを𠮟咤する意味もあったのだろうと推察される。一線を超えたことで処分に至った事象であるものの、その「一線」はどこにあるのか、J全クラブの運営担当やJリーグ側も明確に答えられる人はいないのではないだろうか。
横浜FMの運営担当の物差しを適用するならば、低迷しているチームのサポーターが良くやる「社長出てこい!」と叫び試合後に居座る行為などは、まとめて入場禁止にされても良さそうな気もするが、そんなニュースが耳に入ってくることはない。
ちなみに、この居座り行為はJリーグ独特のサポーター文化となっており、海外ではこうした光景が見られることはない。あまりにも不甲斐ない試合であれば、試合終了を待たずにさっさと帰宅し、終了のホイッスルが鳴った頃にはゴール裏が“無人”というケースもある。
またイタリアのセリエAでは、勝利した際にはゴール裏のサポーターとともに祝うことはあるが、サポーターと選手が言葉を交わすことは八百長対策の観点から厳に禁止されている。

変化するサポーターの禁止行為
海外では発煙筒の使用が日常となっているが、厳密に言えばUEFA(欧州サッカー連盟)やFIFA(国際サッカー連盟)のルールではこれを禁止している。FIFAワールドカップ(W杯)の会場ではライターの持ち込みさえも禁じられている。
しかしながら、発煙筒を焚いたサポーターが特定され入場禁止になったケースは数えるほどで、2024年のUEFA欧州選手権ドイツ大会でのクロアチア代表対アルバニア代表(6月19日/フォルクスパルクシュタディオン/2-2)で発煙筒を焚いたクロアチアサポーターに対する罰則は、サポーター個人ではなく、クロアチア連盟への2万8000ユーロ(約480万円)の罰金という形が取られた。
Jリーグでも2018年の天皇杯決勝、浦和レッズ対ベガルタ仙台(埼玉スタジアム2002/1-0)の試合前後に、スタジアム周辺で発炎筒を使用したとして、浦和のサポーター3人が書類送検されたが、その罪状は「道交法違反」だった。そのメンバーの1人の年齢が61歳だったことで、他クラブのサポーターから失笑を買った事件でもあったが、サポーターが発煙筒を焚く違法性を担保する法整備がされていないことも明らかにされた一件だった。
創設間もない頃のJリーグでは、発煙筒が黙認されていただけではなく、紙吹雪が舞い、チアホーンも応援グッズとして使用されていた。前者は国立競技場での試合の際、紙吹雪が近くを走る首都高まで飛んでしまい通行止めになったことで禁止され、チアホーンもスタジアム周辺の住民からの騒音被害の訴えがあり、販売自体が禁止されスタジアムから姿を消した。
時とともにサポーターの禁止行為も変化しているが、ピッチ乱入、発煙筒などの危険物持ち込み、差別は言うまでもないが、個人的なジェスチャーにまで罰則を科す根拠はどこにあるのか。仮に中指を立てた相手が自軍の選手ではなく、対戦相手の横浜FCの選手であれば見逃したのか。横浜FMの運営担当やJリーグ側は明確にする義務があるだろう。
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