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東京23区内でJリーグ入りを目指す7クラブ。抜け出すのはどこか

Jリーグ 写真:Getty Images

東京23FC(関東リーグ1部)

2003年に「東京23SC」として創設され、2010年に現名称の「東京23FC」に改称した同クラブ。創立当初は2006年に解散した実業団クラブ「佐川急便東京SC」から退団した選手の受け皿として、「佐川東京23SC」と名乗っていたが、佐川急便側からの要望で改称したという歴史がある。

江戸川区をホームタウンに定め、スピアーズえどりくフィールド(江戸川区臨海球技場)をホームグラウンドとしている。Jリーグへの参入を目指すと同時に地域密着を方針とし、セカンドチーム、U-18、U-15、サッカースクールなど各年代のカテゴリーを展開している。

クラブ名にちなみ、毎月23日に選手・スタッフ総出で、地域住民とともに江戸川区で地域清掃活動「23クリーンプロジェクト」を行い、地域に根差した取り組みを行っている。

2016シーズンには羽中田昌監督の下、関東リーグ1部で優勝したものの、地域CL(全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)で敗退し、惜しくもJFL昇格を逃した。その後、2021年には「Jリーグ百年構想クラブ」に認定されたものの優勝に届くことなく、昨2024シーズンも2位に終わった。

しかしながら他のクラブに先駆け、あくまでも東京23区にこだわり、ゆくゆくは「世界に通用するクラブになる」ことを目標に掲げている同クラブ。その経営姿勢は、東京23区内で活動するクラブの道標となっている。


エリース豊島FC(関東リーグ1部)

エリース豊島FCは、1970年、立教高校(現立教新座高校)サッカー部OBを中心に創立された。チーム発足時期の星座である牡羊座(aries)に因んで命名されたという。昨2024シーズンまで「エリース東京FC」という名称だったが、2024年12月に豊島区と「豊島区ホームタウン連携協定」を締結したことで、今季からクラブ名も改めた。

1995シーズンに関東リーグに初昇格。その後、関東2部、東京都1部への降格も経験したが、関東1部に復帰した昨2024シーズンは7位という成績を残し、残留に成功。今年クラブ創設55周年の節目を迎え、創設年だけで言えばこれら各クラブの中で最も古い。

ジュニアユースチームを持つ一方、セカンドチームの「エリースラムズ」、エリースFCを引退したOBによる30代中心の「エリース東京クラシック」、40代から50代中心の「エリースゴールドカード」といったシニア年代のクラブが充実している点がこのクラブの特長でもある。

しかしながら、ホームゲームは清瀬内山運動公園やAGFフィールド、味の素フィールド西が丘などを転々としている現状で、スタジアム建設計画もないことから、現状ではクラブとしての基礎を築いている段階といっていいだろう。


渡邉千真(松本山雅所属時)写真:Getty Images

SHIBUYA CITY FC(関東リーグ2部)

SHIBUYA CITY FC(渋谷シティFC)は、2014年、スポーツコンテンツプロデュース会社の株式会社dscマーケッターである山内一樹氏が代表を務め、SNSで出資者を募り、トークン(暗号資産)を活用した資金調達を実施する異色のクラブ。

創立当初は「TOKYO CITY FC」という名称で、2015シーズンから東京都4部9ブロック(世田谷区など)からスタートし、翌2015年東京都リーグに加盟。4部から年々カテゴリーを上げ、2019年に2部に昇格すると同時に運営会社、株式会社PLAYNEWを創業。株式会社サイバーエージェント出身の実業家である小泉翔氏が代表取締役CEOに就任し、元日本代表DF阿部翔平をクラブ史上初のプロ契約で獲得した。

「渋谷からJリーグを目指す」と宣言し、2021年にクラブ名を現在の名称に変更。渋谷区に本社を置く東急や伊藤園など220社を超える企業とスポンサー契約を締結し、翌2022年には元日本代表MF戸田和幸氏をテクニカルダイレクター(TD)兼コーチに招聘(戸田氏のSC相模原監督就任により1シーズンのみで退任)、2023年には現在JFA Proライセンスを受講している元U-21日本代表DF増嶋竜也氏を監督に招聘。昨2024シーズン、東京都1部リーグで2位に食い込み、今2025シーズンは関東リーグ2部で戦うことが決まっている。

元松本山雅FCのFW渡邉千真、元柏レイソルのMF三原雅俊といった元Jリーガーを積極的に獲得し、クラブ立ち上げから10年ほどで急成長を見せている。

2021年には代々木公園内に4万人規模のサッカースタジアムが建設される計画が報じられ、2030年までの完成へ向け、既に官民一体となって動き出しているという。この代々木スタジアムについては、FC東京、東京Vに加え、町田ゼルビアも本拠地移転を狙っていると噂されている。

スタジアム完成の暁には、この新スタジアムに見合うクラブになっている必要がある渋谷シティFC。いかにも渋谷らしい新たなアプローチでJ入りを目指す同クラブの今後に注目したい。


本田圭佑氏 写真:Getty Images

EDO ALL UNITED(関東リーグ2部)

昨2024シーズンの東京都1部リーグで優勝。関東圏の都道府県リーグ1部で上位に入った全16クラブがトーナメントで対戦する関東社会人サッカー大会決勝で渋谷シティFCに敗れたものの、JFLからの降格クラブがなかったため、今2025シーズン関東リーグ2部への昇格が決まったEDO ALL UNITED(江戸オールユナイテッド)。

クラブ名よりも、元日本代表MF本田圭佑を発起人に誕生したクラブと言った方が分かりやすいかも知れない。2020年、「全員参加型のリアルサカつく(セガのサッカークラブ経営シミュレーションゲーム『プロサッカークラブをつくろう!』)」をコンセプトとして発足した。

クラブ運営は月会費1万~5万円の会費を払えば誰でもなれる「オーナー」が担い、重要な決議事案の提案から決定まで、すべてオーナーの投票で決まるという斬新な経営スタイルを採用している。立ち上げからわずか1年で会員数は200人超え。ゼネラルマネジャー(GM)には作家の乙武洋匡氏、監督にはタレントの武井壮氏を起用し話題を呼んだだけではなく、月9ドルを支払い公式ファンクラブに入会すれば、経営内容のレポートを見ることができるという“サポーター参加型”のクラブだ。

関東リーグ2部を戦う今2025シーズンへ向け、元Jリーガーの14人もの新戦力が加入。戦力アップにも抜かりはない。

渋谷シティFC同様に、これまでの常識に囚われない経営スタイルを取るクラブだが、この方針でどこまで上に行けるか。FC東京、東京V、町田ゼルビアといった既存のJクラブに相対していけるか。そして23区内にJクラブが誕生するのか。楽しみは尽きない。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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