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スポーツベッティングの日本上陸を阻んでいるものは。オンラインカジノ問題

写真:Getty Images

昨今、オンラインカジノ問題が芸能界を震撼させている。漫才コンビ「令和ロマン」の髙比良くるま氏や、同じく「とろサーモン」の久保田かずのぶ氏といった有名芸人が相次いで警視庁から事情聴取を受けた。

髙比良氏は過去にオンラインカジノで遊んでいたことを認め、2月15日にコンビの公式YouTubeで謝罪。テレビ各局も対応に追われ、冠番組の差し替えなど実害が出ている。芸能界では一体どこまでオンラインカジノが広がっているのか、現時点では見当が付かずにテレビ各局は戦々恐々としているという。

オンラインカジノは近年問題が指摘され始めており、政府広報オンラインでは今年1月9日に「オンラインカジノによる賭博は犯罪です!」という記事を公開。殊更に“グレーゾーン”はなく違法であるという点を強調した。

ここでは、サッカーにも縁の深いスポーツベッティングを含んだオンラインカジノの現状と、その行方について考察したい。


岡田武史氏 写真:Getty Images

岡田氏「スポーツベッティングをオープンに」

この件でにわかに注目されているのが、今2025シーズンからJ2を戦っているFC今治のオーナーで、2度にわたって日本代表監督を務めた岡田武史氏による発言だ。2023年8月22日に公開された『NewsPicks』のYouTubeチャンネル内での実業家・堀江貴文氏との対談の中で発言で、この模様は切り取り動画としてTikTokでも公開されている。

対談の中で岡田氏は、「スポーツベッティングをオープンにしないと。日本人が海外のスポーツベットに賭けているわけだから、お金が(海外に)出ていってしまっている」と指摘。堀江氏もこの意見に呼応し、「それ言ってくれる人、なかなかいないんですよ」と発言。立て続けに「警察権力とかの話になっちゃう」と語ると、岡田氏は「巻き込まないでよ!」とジョークで返した。

堀江氏は2016年、京都府警がオンラインカジノを利用した男性3人を逮捕し、その内2人は罰金刑を受け入れた中、残る1人は略式起訴を受け入れずに裁判で争う姿勢を見せたが、結果「不起訴」となったことを挙げた。仮に最高裁判決で無罪となれば、事実上のオンラインカジノ合法化となってしまうことを危惧し、軟着陸的に決着させたと説明している。

炎上を恐れず、常に先鋭的な発言を続ける堀江氏はともかく、日本サッカー界の重鎮となりつつある岡田氏からの発言は重いものだ。選手や指導者を経験した後、クラブ経営の道を進んだ同氏だが、いかにしてお金を生み出すことが難しいかを分かっているからこその発言とも言える。


オンラインカジノ 写真:Getty Images

なぜ今になってオンラインカジノを狙い撃ち?

前述した京都府警の勇み足による逮捕劇と、パチンコ・スロット業界や公営ギャンブルといった既存の利権を守るためと思われる不起訴処分によって、事実上の合法というお墨付きを得て海外オンラインカジノの日本進出には拍車が掛かった。

それを今さら、有名芸人をスケープゴートにした上で違法と喧伝し始めたことは「周回遅れ」と言わざるを得ない。特に髙比良氏の場合、2019年に慶應大学時代の友人からの誘いで始め、最後にオンラインカジノで遊んだのは4年前。仮に賭博罪だったとしても、公訴時効の3年を経過しており立件は不可能だ。にも関わらず、テレビ出演は見合わせとなり、劇場出演も自粛を強いられた。社会的制裁が大き過ぎやしないか。

なぜ今になって警察がオンラインカジノを狙い撃ちするようになったのか。裏読みすれば、管理下にあるパチンコ・スロット業界の管轄は警察庁で、管理実施団体の全日本遊技事業協同組合連合会(全日遊連)の要職が警察OBで占められている“ズブズブの関係”にあるからとも取れる。オンラインカジノの脅威から、パチンコ・スロット業界を守っていると考えることもできよう。

また、競輪とオートレースは経済産業省が、ボートレースは国土交通省が、競馬は農林水産省が、 宝くじは総務省が、totoなどのスポーツ振興くじは文部科学省が所管し、それぞれが利権化してしまっている。そこに海外から民間企業が参入するとなれば、霞が関の常識からすれば「排除一択」になるのも分かる。

日本においてもカジノ建設の機運が高まり、2016年にIR法が施行されたが、あくまでカジノを中心に宿泊施設、会議施設、テーマパーク、商業施設などを一体的に整備する統合型リゾート(IR)という、出来るだけギャンブル色を薄めた名称で立案された過去がある。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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