
出版社とプロ野球球団の関係
メディアは「報道の自由」を免罪符とし、有名人のスキャンダルを暴いている。その賛否は別として、そこには「報じる自由」と同様に「報じない自由」も含まれている。どういう意味か。
例えば西武ライオンズと小学館の関係は深い。数多くのコラボイベントを開催し、小学館の人気漫画雑誌『コロコロコミック』とのコラボポスターなどが製作された上、2012年には女性向けファッション誌『Domani』に栗山巧外野手と片岡易之内野手(当時)がモデルとして登場した。
仮にその時点で小学館発行の『週刊ポスト』や『女性セブン』の記者が西武ナインのスキャンダルを掴んでいたとしても、共にビジネスパートナーであることから、記事化にはストップがかかっていただろう。出版社とて一営利企業だ。利害関係のあるステークホルダーも存在する。関係を維持することが、一選手の私生活を暴くことよりも優先されるのは企業の論理からすれば当然である。
なにもJリーガーがプロ野球選手のように、スキャンダルから守られるべきだと言っているわけでない。そもそも侍ジャパン(野球日本代表)クラスでも不貞行為をはたらく選手がゴロゴロいることは異常なのだ。
さらに言えば、プロ野球球団は不祥事を起こした選手が報道によって危うい立場に立たされれば、「出入り禁止(取材拒否)」という強硬手段に打って出ることもある。これは総合スポーツ誌『Sports Graphic Number』を発行している文藝春秋や、『Sportiva』を発行している集英社、数々のスポーツ書籍を発行している小学館などに対しては効果的な対処法となっている。

協会からも所属クラブからも守られないJリーガー
福田のケースは論外として、日本サッカー界は“スキャンダル慣れ”していないが故に、誰からも守られることなく選手が矢面に立たされることになる。
2024年、『週刊新潮』で性加害疑惑が報じられた日本代表FW伊東純也(スタッド・ランス)のケースでも、クラブは伊東を信じ守ったが、日本サッカー協会はAFCアジアカップの真っ最中にも関わらず伊東を代表チームから追放。その後、不起訴処分が出たにも関わらず、7か月もの間代表招集を見送った。
また、ブンデスリーガのマインツに所属するMF佐野海舟は同じく2024年、鹿島アントラーズから移籍するタイミングで、不同意性交罪で逮捕された。仮に起訴されていれば初犯でも実刑の可能性があったのだが、不起訴処分となった。理由は明らかにされていないが、かなりハードな示談交渉があったのだろうと予想できる。そして彼を信じ見守ったマインツで、レギュラーとして大車輪の活躍を見せている。
しかし、2023年のW杯アジア2次予選と2024年のアジアカップで日本代表に選出された佐野だが、“ワケあり”の選手を敬遠する森保一監督に再び招集される可能性は限りなく低いだろう。
文春砲を浴びてもノーダメージでプレーを続けることが許されるプロ野球選手と比較すると、あまりにも不条理に思えるが、それが日本サッカー界の常識となっている。「推定無罪」の原則に則り、仮に犯罪を犯したとしても、罪を報い改心した選手に対しセカンドチャンスを与える欧州クラブと比べても、対照的な対応だ。
協会からも所属クラブからも守られないJリーガーにとって、不祥事は自身の選手生命に直結する。そして週刊誌にとって、地方クラブの1選手を社会的に抹殺することなど赤子の手をひねるようなものだ。
福田の度重なる淫行は許されることではないし、その処分も見合ったものだろう。しかしながら、プロ野球界との比較という視点で見ると、その差に愕然とさせられる。職を奪われた福田の立場に立てば、恨み節の1つも言いたくなるのではないだろうか。
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