
森保監督は鬼になれるのか
柔和なキャラクターからは想像できないが、森保監督は自身に反抗的な選手に対し厳然たる態度で接する指揮官で知られる。
サンフレッチェ広島監督時代の2014年、主将のエースFW佐藤寿人を途中交代させると、佐藤は森保監督に悪態をつき握手も拒否。これに対し森保監督は1週間の謹慎処分を科し、佐藤の全体練習参加も許さず、その後の2試合はベンチにも入れなかった。結果を出している上に “鬼の顔”を持つことを知っている選手は、森保監督の後を付いていくしかない。
しかしながら、日本代表のほとんどが海外組で構成されている現在、選手の多くは欧州の最先端の戦術に日常的に触れている。アジアでは図抜けた強さを誇る日本代表だが、欧州強豪国との親善試合を組むのが難しい現在、チームの現在地が分かりにくくなっているのが現状だ。
森保監督自身、欧州の最先端戦術を学んだり、アップデートしないままW杯本戦に突入すれば、一気に“ボロ”が出る可能性もあるだろう。事あるごとに“個”の充実を口にし、「戦術で勝つ」ことを放棄しているような印象を与えていることが不安を増幅させる。
守田のようにあくまでチームのために苦言を呈し、森保監督に聞く耳がある限り、今回の八村のようなバスケ界に見られる問題に発展することはなさそうだ。しかし問題は歯車が狂い出した時だ。
海外組の選手が「ウチの監督はこうしていた」などとバラバラな主張をし始めたら収拾が付かなくなるだろう。そして、日本での実績しかない森保監督に対し尊大な態度を取る者が現れ、その選手が必要不可欠な主力だった場合、森保監督は鬼になれるのか、疑問が残る。

決して珍しいことではない代表監督批判
海外においてはどうか。フランス代表のディディエ・デシャン監督は、主力選手から批判を受けている。
2024年9月のUEFAネーションズリーグ中に、GKマイク・メニャン(ミラン)がFWキリアン・ムバッペ(レアル・マドリード)らについて、「あまりにもエゴイスティックで自分のことしか考えていない」と発言したことがフランスメディアで報じられた。同僚に批判されたムバッペは、その責任をデシャン監督の戦術とし、監督批判を展開。チームは空中分解寸前の状態だ。
また、ウルグアイ代表のアルゼンチン人指揮官マルセロ・ビエルサ監督に対しては、バルセロナでも活躍したFWルイス・スアレス(インテル・マイアミ)が昨年10月、地元のテレビ番組で監督批判を繰り広げた。
スアレスは、ビエルサ監督特有の厳しい管理をやり玉に挙げ、選手によって扱いを変えていることや、選手に対して挨拶を返してくれないといったことを例に「選手たちの我慢は限界に達し、爆発してしまう」とチームに不和が生じていることを明かしている。
デシャン監督やビエルサ監督といった実績のある監督ですら、マネジメントを間違うと批判の的となってしまう。世界的に見れば、代表監督批判など決して珍しいことではないことが分かる。
八村の問題は、選手と監督の間に圧倒的な経験値の差があることによって引き起こされた。そしてこの問題はサッカー界にも重なる部分がある。
日本代表がW杯に初出場した1998年フランス大会直前に、FW三浦知良(カズ)が代表から落選させられた原因も様々に論じられてきたが、コーチから昇格しW杯出場に導いた岡田武史監督に対し「岡ちゃん」呼ばわりをやめなかったからだとの説もある。
互いにリスペストのないチームが勝てるチームになれるはずはない。森保ジャパンも八村の批判やバスケ界の問題を他山の石とせず、“反面教師”としてチームビルディングに生かす必要があるだろう。
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