Jリーグ

J3リーグ2025シーズン新監督7名の期待度

写真:Getty Images

2月15日に開幕するJ3リーグ。昨2024シーズンは大宮アルディージャの独走で幕を閉じたが、今2025シーズンは栃木SC、ザスパ群馬、鹿児島ユナイテッドといったJ2から降格してきた3クラブに加え、JFLを制した栃木シティ、J3・JFL入れ替え戦でY.S.C.C.横浜を下した高知ユナイテッドといった新顔を迎え、混戦模様が予想される。

2位以上でJ2自動昇格。3位から6位に入ればJ2昇格プレーオフに出場できる一方で、最下位ともなればJFL自動降格(JFL2位以上のクラブがJ3クラブライセンスを持っていれば)、19位に終わればJFL2位との入れ替え戦に臨まなければならない厳しいリーグとあって、監督にかかるプレッシャーはJ1、J2以上だろう。同時にチーム人件費を掛け、実績のある監督や選手を集めたとしても、それがそのまま順位に反映されるとも限らない点もJ3の厳しさでもあり、面白い点でもある。

ここでは、新シーズンへ向け、J3クラブが迎えた計7人の新指揮官のキャラクターとともに、チームの展望を検証したい。

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沖田優監督 写真:Getty Images

ザスパ群馬:沖田優監督

期待度:★★★☆☆

ザスパ群馬は、1995年に当時群馬県4部に属していた「リエゾン草津」として産声を上げた。そこから昇格を続け、2004年にJFLに昇格するまでは「ザスパ草津」の名で、ホームゲームを草津温泉にある本白根第三グラウンドで開催。2005年にJ2入りを果たすと同時に、本拠地を敷島公園県営陸上競技場(正田醤油スタジアム群馬)に移し、現在に至っている。

クラブの歴史上、一貫して日本人監督が指揮し、その中にはセレッソ大阪(2000-2001)、サガン鳥栖(2002)、ヴィッセル神戸(2003)の監督を歴任した副島博志監督(2010-2012)や、昨シーズン清水エスパルスをJ2優勝に導いた秋葉忠宏監督(2013-2014)も名を連ねている。

2024シーズンは、元浦和レッズ(2018、2019-2020)の大槻毅元監督が3年目を迎えていたが序盤から低迷。5月に早々に解任され、ヘッドコーチだった武藤覚氏を昇格させたが、チーム状態が上向くことなく、最下位での降格が決定。またこのシーズン前には公式ファンクラブが新規募集を休止し、サポーターからクラブ運営を不安視する声が上がっていた。

2018-2019シーズン以来のJ3となり、新監督に指名された沖田優監督。Jクラブの監督は初めてだが、指導実績は遜色ない。進学校の成田高校から筑波大学に進み、そのまま大学に残りコーチに就任すると、2004年からはプロクラブの指導者の道に転じ、大宮アルディージャ、北海道コンサドーレ札幌、ベガルタ仙台のコーチを経験している。群馬の15人もの新加入選手も20代前半が中心で、新風を吹き込んでくれそうな期待感もある。

同時に強化本部長の松本大樹氏の退任、佐藤正美氏の就任も発表されたが、サポーターを驚かせたのが、同クラブで引退したばかりの元日本代表MF細貝萌氏の社長兼GM就任だろう。会長だった山田耕介氏が相談役に、社長だった赤堀洋氏が会長に就任することで、細貝氏がいきなりクラブ経営の全権を担う重責を負うことはなさそうだが、「新生ザスパ」をアピールするには打って付けの抜擢といえる。


藤本主税監督 写真:Getty Images

長野パルセイロ:藤本主税監督

期待度:★★★☆☆

2014シーズンのJ3参入以来、最低の18位に終わり、残留争いに巻き込まれた昨2024シーズンの長野パルセイロ。髙木理己前監督の退任はやむを得ない結果だった。新監督として迎えたのは、J初采配となる藤本主税監督だ。

藤本監督の現役時代は、徳島市立高等学校を卒業後に、アビスパ福岡入り。3年目の1998シーズンから頭角を現し、ゴール後の“阿波おどりパフォーマンス”で人気を博した。翌1999シーズン、移籍したサンフレッチェ広島でもすぐにレギュラーとなり、日本代表にも選出。明るいキャラクターで人気と実力を兼ね備えた好選手で、契約直前で破談となったが、オランダ1部エールディビジのNACブレダから獲得オファーもあったという。

2014年オフに引退し、最後の所属クラブとなったロアッソ熊本で、翌2015年から指導者キャリアをスタート。昨季まで大木武監督の下で4年間ヘッドコーチを務めていた。

強化部長には、大分トリニータで14年もの間陰で支え続けた西山哲平氏を迎え、新体制で再スタートを図る長野。MF藤川虎太朗をジュビロ磐田から獲得するなど8選手の新加入選手を迎え、巻き返しに期待をさせる陣容を整えた。

“大木チルドレン”の藤本監督だが、リスク覚悟の攻撃サッカーを目の当たりにしてきただけに、その長所も弱点も知り尽くしているはず。そこに現役時代はクリエイティブなゲームメーカーだった藤本監督なりのエッセンスが加われば、本人曰く「ハラハラドキドキ」するようなチームが出来上がるのではないだろうか。


早川知伸監督 写真:Getty Images

松本山雅:早川知伸監督

期待度:★★☆☆☆

昨2024シーズンのJ2昇格プレーオフ決勝、カターレ富山戦で後半アディショナルタイムに同点ゴールを喫し、レギュレーションで昇格を逃した松本山雅。指揮2年目の霜田正浩前監督は、昨シーズン途中から采配や選手起用に対しサポーターから不興を買っていたが、掴みかけていた昇格を逃したことで、3年契約だったにも関わらず事実上の解任となった。

新監督に指名されたのは早川知伸監督。2021シーズン途中から当時J2の横浜FCで監督を務めたものの最下位に終わり退任した後、四方田修平監督の下でヘッドコーチを務め、2023シーズンから松本でコーチの任に就き、主に守備面の指導に携わった。新体制発表会で、ジェフユナイテッド千葉から移籍してきたDF小川大貴をはじめとする11人の新加入選手と共に挨拶した早川新監督は、J2昇格を誓った。

しかし、フロントもサポーターも未だにJ1を経験した反町康治元監督時代(2012-2019)を忘れられず、その幻影を追うあまり、監督を取っ替え引っ替えしながら迷走している印象だ。霜田前監督は日本サッカー協会の元強化委員長で、2022シーズン4位で昇格を逃し退任させた名波浩元監督は、今や日本代表のコーチだ。監督選び以前に、このクラブには大きな問題が潜んでいるのではないだろうか。

新体制発表会には約1,800人のサポーターが集結し、揃ってチャントを大合唱したという。これには「J3なのに凄い」と称賛の声も上がったが、逆には、この人気ぶりがクラブの野心を削いでいるという見方もできる。J3では圧倒的な観客動員数を誇り、その数は昨季平均8,489人にも上る。フロントも選手もこの人気に甘えている間は、目を覚ますことはないだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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