Jリーグ

J2リーグ2025シーズン新監督4名の期待度

小菊昭雄監督(左)ジョン・ハッチンソン監督(中)岩政大樹監督(右)写真:Getty Images

2025シーズン、J1リーグでは8クラブで新監督を迎えたものの、J2リーグでは4クラブと動きが少なかった印象だ。うち3クラブが1年でのJ1復帰を目指す降格クラブ。もう1クラブはJ3から昇格したにも関わらず、さらなる飛躍を目指しあえて指揮官交代に踏み切った初昇格クラブだ。

J2リーグは、上位2クラブが自動昇格、6位以上で昇格プレーオフ進出、下位2クラブにはJ3降格が待っており、“沼”にも例えられる厳しいリーグだ。ここでは、J2クラブが迎えた4人の新指揮官の特長とともに、チームの展望を検証したい。

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岩政大樹監督 写真:Getty Images

北海道コンサドーレ札幌:岩政大樹監督

期待度:★★★☆☆

実に7シーズンもの長き間、北海道コンサドーレ札幌を率い、2024シーズン限りで勇退したミハイロ・ペトロヴィッチ前監督。サンフレッチェ広島の監督として2006年に来日し6シーズン指揮し、2012年に浦和レッズに移籍し6シーズン指揮し、日本での生活は19年にも及ぶ。もちろんこれは外国人監督としてはJ最長だ。その監督キャリアの最終年にチームをJ2に降格させてしまったものの、「ミシャ」と親しまれ、Jリーグへの貢献は計り知れない。

再スタートを図る札幌を率いるのは岩政大樹新監督だ。2022シーズン途中、鹿島アントラーズでレネ・ヴァイラー監督解任により、コーチから昇格する形で監督に就任した。チームを立て直し4位にまで引き上げ、翌2023シーズンも5位に食い込んだものの、無冠に終わったことで退任となった。

2024年1月には、ベトナム1部リーグのハノイFCの監督に就いた岩政監督。就任時点で8位だったが立て直しに成功し、10勝3分5敗という成績で最終的には3位にまで引き上げた。ベトナムカップでも準優勝に導いた。ハノイは岩政監督に続投オファーを提示したものの、本人の強い希望により、半年でベトナムから帰国。その後は解説業と並行して、母校の東京学芸大学のコーチを務めた。

プロクラブの監督経験は通算約2年とあって、明確なスタイルを確立しているわけではないが、現役時代は2013年に鹿島退団後、タイリーグのテロ・サーサナ(現ポリス・テロ)やJ2ファジアーノ岡山、JFL東京ユナイテッドでのプレーも経験。コーチとしては、前述の東京学芸大以外にも東京大学や上武大学サッカー部を指導し、上武大では准教授も経験した。

降格チームの宿命だが、札幌は“草刈り場”と化し、FW鈴木武蔵やFW菅大輝、DF岡村大八らの主力が引き抜かれた。一方でベルギー1部のコルトレイクからMF高嶺朋樹が3シーズンぶりに復帰し、FW中島大嘉もレンタル先の水戸ホーリーホックから復帰するなど、J2を戦う上で必要最低限の戦力は整えた。

オーナー企業の石屋製菓が6億円の追加出資を決定するなど、降格を機にクラブを立て直そうとする本気度が伺える。J2クラブとしては比較的多い32人もの選手を抱え、激しい競争を促している岩政監督。「ミシャサッカーを継承し、攻撃サッカーを目指す」と述べたが、まずはメンバー選びに頭を悩ませることになりそうだ。


ジョン・ハッチンソン監督 写真:Getty Images

ジュビロ磐田:ジョン・ハッチンソン監督

期待度:★★☆☆☆

すっかりエレベータークラブとなり、再び1年でJ2に戻ってきたジュビロ磐田。横内昭展前監督は退陣となり、新監督に横浜F・マリノスの暫定監督だったジョン・ハッチンソン監督を招聘した。

しかし磐田は元々外国人監督とは相性が悪いクラブで、成功と呼べるのはJ参入当初のハンス・オフト監督(1994-1996)と、バウミール監督(1998)くらいで、パルメイラスの監督に就任するため辞任したルイス・フェリペ・スコラーリ監督(1997)を除けば、ギョキッツァ・ハジェヴスキー監督(2000)、アジウソン監督(2006-2007)、ペリクレス・シャムスカ監督(2014)、フェルナンド・フベロ監督(2019-2020)はすべて途中解任されている。

昨2024シーズン、19得点のエースFWジャーメイン良をサンフレッチェ広島に引き抜かれたにも関わらず、その穴を埋めるのが名古屋グランパスからの期限付き移籍で獲得したFW倍井謙と、アビスパ福岡から獲得したFW佐藤凌我、筑波大卒のルーキーのMF角昂志郎では心もとない。

藤田俊哉SD(スポーツダイレクター)は目標を「アクションフットボールを実現した上でのJ2優勝」としたが、新体制の顔触れを見ると、その仕事ぶりには物足りなさが残る。

昨シーズンのJ2を見ても、“反則級”と呼ばれるほどの選手層を誇らなければ、優勝はおろか昇格などおぼつかないことは明白だ。J1クラスの強烈な攻撃力を持つブラジル人選手を揃えたV・ファーレン長崎でさえも、プレーオフの末に敗れ去った。少々、J2を侮っている節が感じられる。

このままの体制では、エレベーターどころかJ2定着も現実になりかねない。ハッチンソン監督は優秀な指揮官だが、魔法使いではない。この陣容では監督が志向する攻撃サッカーを形にすることにも苦しむのではないだろうか。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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