クラブワールドカップ 浦和レッズ

浦和レッズのクラブW杯決勝T進出シミュレーション。格など関係なし!

浦和レッズ 写真:Getty Images

FIFAコンフェデレーション(FIFA連盟)全6カ国からの32クラブチームが激戦を繰り広げるFIFAクラブワールドカップ2025が、今年6月15日から7月13日にアメリカの12会場で開催される。

日本から唯一の参戦となる浦和レッズは、2022年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝で出場資格を得た。組み合わせ抽選会の結果、ポット4の浦和はグループEでリーベル・プレート(アルゼンチン/ポット1)、インテル(イタリア/ポット2)、モンテレイ(メキシコ/ポット3)と対戦することが決定。当然のことながら、対戦する3チームは全て格上だ。

しかし思い出してほしい。2022年のFIFAワールドカップ(W杯)カタール大会でポット4だった日本代表は、ドイツ代表、スペイン代表を破り、グループ1位で決勝トーナメント進出を果たした。一方で、格的には劣らないと思われていたコスタリカ代表には0-1で完封負けを喫し、FIFAランキングがピッチ上では何の意味もないことを示した。

もちろん国を代表する選手の集合体である代表チームと、国籍を問わず好選手を集め日常的にトレーニングを積んでいるクラブチームでは、試合へのアプローチや戦術理解度は全く異なる上、試合数も段違いだ。しかし逆の視点から見れば、クラブチームは試合の数だけサンプルの数も多い。同組の強豪クラブが浦和の試合をスカウティングし対策を練ってくるかどうかは分からないが、浦和のスカウティングチームは、ひと泡吹かせようとありとあらゆる手段を使うだろう。

ここでは、FIFAクラブワールドカップ2025グループEで浦和を待ち受ける3クラブの特色、弱点を探り出し、浦和が番狂わせを起こす可能性を検証したい。


リーベル・プレート 写真:Getty Images

リーベル・プレート

アルゼンチン/クラブランキング上位/ポット1

アルゼンチンのリーベル・プレートは、同クラブのレジェンド、マルセロ・ガジャルド監督が率いる。現役時代には、欧州挑戦(モナコ/1999-2003、パリ・サンジェルマン/2007)や、2度のW杯で活躍できなかったものの、リーベル・プレートでの通算9シーズン(1992-1999、2008-2010)で137試合に出場。1996年には当時のラモン・ディアス監督の下、リベルタドーレス杯優勝にも貢献した。

ガジャルド監督は、アルゼンチン代表時代の恩師であり、「エル・ロコ(変人)」と呼ばれるほどの戦術マニアとして知られるマルセロ・ビエルサ監督(現ウルグアイ代表監督)から多くの影響を受けており、前からのプレッシングという南米的なサッカーの中に、縦への早い展開を基本的な戦術としている。

ビエルサ監督仕込みのシステマティックなプレスの掛け方から、縦に早いダイレクトプレーでゴールを目指す戦い方で、“ファンタジスタ”だった自身の現役時代からは想像もできないような泥臭いプレースタイルのチームだ。

手数を掛けて崩すよりも、DFラインの手前でマークのズレを生じさせ、空いたスペースの裏を取る攻撃スタイル。ポゼッションにこだわりはなく、タイトな守備から攻撃に転じる際にはロングボールも用い、アーリースローインも速攻の一環として多用する。とりあえずロングボールを蹴り、セカンドボールを拾った上で、そこから攻撃が開始されるイメージ。フォーメーションは【4-4-2】と【4-3-1-2】の併用だ。

急所を挙げるとすれば、相手カウンター時、サイドバックが突破を許しポケットに侵入されると、センターバックとボランチが1対1の守備を強いられ、相手の3列目あるいはDFからの飛び出しへの対応が間に合わないことが多い点だ。

浦和がリーベル・プレートに付け入るならばこの弱点だろう。キーマンには、昨2024シーズン途中加入で左サイドバックのレギュラーポジションを奪取し、攻撃面でも持ち味を発揮してJ1リーグで4得点を記録したDF長沼洋一を指名したい。


インテル 写真:Getty Images

インテル

イタリア/クラブランキング上位/ポット2

2024/25シーズン、セリエA第18節終了時点で3位ながら、総失点は首位ナポリに次ぐ最小の15。とにもかくにも点を取られないチーム、それがインテルだ。【3-5-2】のフォーメーションを敷き、堅守を誇る守備陣に加え、攻撃陣もリーグ1位の45得点。このスタッツだけを見ると、浦和がインテルに勝つ可能性はほとんどないようにも思える。

しかし、リーグ戦38試合で総失点が22で第35節まで無敗だった昨シーズンに比べると、失点数のペースが増しているインテル。手厳しいイタリアメディアからは、2021シーズンから監督に就任し4季目の指揮を執るシモーネ・インザーギ監督への批判が見られるようになってきた。

サウジアラビアで行われたイタリアスーパーカップでも1月3日の準決勝でアタランタを2-0で下したものの、7日の決勝ではミラン相手に2点差をひっくり返され2-3で敗れ、準優勝に終わった。実に在籍7シーズン目となるディフェンスリーダーでオランダ代表のDFステファン・デフライが32歳を迎え、衰えが指摘されているのに加え、セットプレーからの失点も目立つようになった。

攻撃陣は、トルコ代表MFハカン・チャルハノールを中盤の底に置き、そこからの配球を軸としている。しかし、得点ランキングトップタイの12得点を記録しているフランス代表FWマルクス・テュラムのスピードと、昨シーズンのセリエA得点王のアルゼンチン代表FWラウタロ・マルティネスのフィジカルとテクニック任せの部分が大きく、強敵相手に大勝したかと思えば、次戦では格下相手にゼロウノ(1-0)の辛勝という、調子の波が大きいことが首位に立てない要因となっている。

また、デフライを中心とした3バックが安定したパフォーマンスを維持できていない点も指摘されている。現在のところ、アレッサンドロ・バストーニとヤン・ビセックが脇を固めているが、この3人の1人でも欠けると、途端に組織的守備に綻びが生じるのだ。ベンジャマン・パバールやフランチェスコ・アチェルビをローテーション起用して凌いでいるものの、特にセットプレー時に弱さが顔を覗かせる。

浦和が勝利するとすれば、セットプレーに勝機を見い出すことが近道となる。もちろん0-0の時間帯を出来るだけ長く保ち、後半20~30分以降にFKを得てワンチャンスをモノにしたい。そこまでは“ドン引き”と言われようが、相手2トップと球の出どころであるチャルハノールを徹底マークした上で膠着状態に持ち込み、相手をイライラさせることも重要だ。

そこから相手陣地深くでファールを得ようものならこっちのモノだ。ここでキーマンとなるのは、柏レイソルから完全移籍で獲得したMFマテウス・サヴィオだろう。昨2024シーズン残留争いに巻き込まれた柏の中でも独り気を吐き、9ゴール7アシストを記録してベストイレブンにも選出された。得点やアシスト、プレースキッカーのイメージが強いが、昨季のJ1リーグで総走行距離で391.3キロを記録し、リーグ7位に位置する“走って守れる”選手でもある。おそらくグループで最も強いであろうインテルを倒すには欠かせない武器となる。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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