ラ・リーガ レアル・マドリード

モドリッチの人間的な魅力はどのように育まれたのか?乗り越えた4つの試練

ルカ・モドリッチ(トッテナム・ホットスパー所属時)写真:Getty Images

プロ契約後も続く移籍という挑戦

ディナモ・ザグレブで頭角を現したモドリッチは、プレミアリーグのトッテナム・ホットスパーの目に留まった。そして2008年、22歳の時にクラブ史上最高額の移籍金で加入するも、周囲の期待の割に活躍できず、1年目は非常に苦労しリーグ8位で無冠に終わっている。

次第にパフォーマンスを発揮するようになり、2009/10シーズンにリーグ4位となり、2010/11シーズンにスパーズ(トッテナムの愛称)を約半世紀ぶりとなるUEFAチャンピオンズリーグ(欧州CL)に導く。

そして欧州CLで敗れた相手であるレアル・マドリードに2012年に加入することになるのだが、そこでも1年目はシーズン序盤のプレー時間が安定せずに、主要タイトルも逸して「期待外れだ」と周囲を失望させた。

しかし尻上がりに調子を上げ、翌2013/14シーズンに欧州CLとコパ・デ・レイ(スペイン国王杯)の二冠を達成。チームになくてはならない選手になった。次々と現れるつわものの新加入選手とのポジション争いに敗れたかと思いきや不死鳥のごとく蘇り、クラブ史上最年長の選手にまでなった。


ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

ジダン監督に懇願されてキャプテンに

モドリッチは出しゃばるタイプではなく、むしろ控えめな性格だ。しかし人一倍気持ちが強く負けず嫌いだ。その類まれな人間力にカリスマが宿り、チームをまとめあげる。

モドリッチが表立ってキャプテンシーを発揮するようになったのは、レアル・マドリードで黄金時代を築いたジネディーヌ・ジダン監督(2016-2021)に懇願されてからのことだ。2019年に初めてマドリードのアームバンドを巻くことになった。

チームを率いるというよりは、包み込むといったほうが正しいかもしれない。その人格がプレーメイクの能力とあいまり、チームになくてはならない貴重な存在になっている。

トッテナムから加入したウェールズ代表FWガレス・ベイル(2023年引退)が長きに渡りマドリード(2013-2022)で活躍できたのも、ピッチ内外でのモドリッチのお膳立てによるところが大きい。

とりわけマドリードのような世界中からスーパースターをかき集めたようなチームでは、一つ間違えば個性がぶつかり合い空中分解しかねない。しかし、モドリッチという偉大な人間を前にしたら、どんなビッグプレーヤーも初心にかえるのである。

モドリッチにとって言葉は、さして重要ではない。自らの背中と風格でチームを導くのだ。心に深い闇をかかえるモドリッチは、白く美しい光を放つロス・ガラクティコス(銀河系軍団、レアル・マドリードの愛称)をつなぎとめるだけの計り知れない引力を生み出している。

モドリッチのプレーは、生き様やそこから醸し出される人間力がにじみ出ている。選手の人となりや内面を感じ取れると、同じサッカーの試合でも、また違った風に見えてくることだろう。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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