Jリーグ

FC大阪本拠地問題のお粗末過ぎる顛末。これぞ“税リーグ”の極み?

FC大阪 写真:Getty Images

税金を投入するか、ホーム移転か

Jクラブがスタジアム所有者に撤退を求められるという過去にない事例を何とか乗り切ったFC大阪だが、前述の通り今度はJリーグ側がスタジアムに「NO」を投げかける事態となったわけだ。その原因を作ったのは出来もしないプランを提示し、花園を“私物化”した上、不備を追及されると今度は市に責任があるかのように誘導したFC大阪側にあるのではないだろうか。

FC大阪側は新スタジアム建設について「ラグビーの発展に寄与したい」と説明しているものの、当初の約束事だった「第2グラウンドの改装」という構想については否定的だ。FC大阪を運画管理者に指定した市側は“庇を貸して母屋を取られた”思いだろう。しかし、FC大阪の顧問を務める野田市長は怒りの持っていきようがなく、Jリーグに噛みついたというのが今回の図式だ。

J2クラブライセンスをクリアするスタジアム建設をする気も財力もないとあって、残された道は2つ。「税金を投入してスタジアムを建設する」か「FC大阪にホームタウン移転を促す」ことしかない。“ラグビーの発展に寄与”などといった理想を述べておきながら、結果的にはサッカーとラグビーの共存共栄が無理筋であることを明らかにしたからだ。

サッカーとラグビーを両方開催するスタジアムは花園だけではない。国立競技場はじめ、ニッパツ三ツ沢競技場やヤマハスタジアム、豊田スタジアム、ノエビアスタジアム神戸でもジャパンラグビーリーグワンの公式戦や大学ラグビーの試合が開催されている。

しかし花園はラガーマンやラグビーファンにとっての“聖地”だ。東大阪市には「花園ラグビー場条例」が存在し、「使用目的がラグビー場の設置目的にそぐわない時は施設の使用を許可しない」と明記され、スタジアムのラグビー優先利用も条例で規定されている。東大阪市ではラグビーは“特別扱い”され、それは今後も変わらないだろう。


Jリーグ旗 写真:Getty Images

J2クラブライセンスの敷居が高すぎる問題

FC大阪もかつて、地域リーグや関西リーグ時代は豊中市の服部緑地陸上競技場をホームとしていた。現在、東大阪市をホームとしているが、富田林市、四條畷市、阪南市、門真市とも包括連携協定を締結している。本音を言えば、FC大阪はこのどこかの中で、J2クラブライセンスをクリアする新スタジアムを建設してくれる自治体が現れれば、ホーム移転も辞さない考えでいるのではないだろうか。

FC大阪が悪いと言っているのではない。自前でスタジアムを建設できる財力を持つクラブが限られているJリーグの現状にあって、「観客席の3分の1に屋根を設置する」というJ2クラブライセンスの敷居が高すぎることも理由だと思われるからだ。

そして、Jクラブのほとんどが自治体所有のスタジアムを本拠地として使用している。実際、ヴァンラーレ八戸、福島ユナイテッド、SC相模原、アスルクラロ沼津、奈良クラブ、FC今治、テゲバジャーロ宮崎がJ2クラブライセンスの施設基準の例外規定を適用されている。この全てがホームスタジアムの屋根に関するものだ。

これを解決するには、結局スタジアム所有自治体の税金に頼るしかない。この現実によって、“税リーグ”と揶揄されていることを、Jリーグ上層部は知っているのだろうか。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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