2024シーズン明治安田J2リーグは全日程を終了し、優勝した清水エスパルスと2位の横浜FCの来季J1昇格が決定した。しかし残りの昇格1枠を目指し、プレーオフが残されている。
プレーオフ進出を決めた3位のV・ファーレン長崎と4位のモンテディオ山形は、準決勝において「引き分けでも決勝進出」というアドバンテージがあるものの、何が起きるか分からないことは昨季のプレーオフ決勝のアディショナルタイムでの劇的同点劇(東京ヴェルディ対清水/1-1で東京VがJ1昇格)で証明済みだ。
一方で、昇格クラブや降格クラブも含め、各クラブが来2025シーズンへ向けて動き出している。ここでは監督人事にフォーカスし、既に始まっているシーズンオフの動きについて深堀りしたい。
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ブラウブリッツ秋田:吉田謙監督
評価:★★★☆☆/続投可能性:100%
吉田謙監督は、2020シーズン当時J3のブラウブリッツ秋田の監督に就任し、いきなり圧倒的な強さで優勝を果たしJ2昇格。今季5年目、クラブ史上最高の10位でJ2残留を決めた。
毎年のように戦力が入れ替わりながらも、練習から強度を求め、結束力あるチームを作る手腕は、J2屈指だ。加えて、吉田監督の魅力はその「言葉」だ。その独特過ぎるボキャブラリーと、哲学的な例えを含めたコメントが注目され、2022年には公式グッズとして、日めくりカレンダー「まいにち吉田語録」が発売された。
J2昇格以降は2桁順位が続いているものの、2023シーズンには一時は暫定首位にも立った秋田。今オフも大幅に選手が入れ替わることが予想されるが、攻守が噛み合えば上位戦線を掻き回すだけのポテンシャルを秘めている。来季も試合のみならず、“吉田語録”にも注目だ。
ベガルタ仙台:森山佳郎監督
評価:★★★★☆/続投可能性:100%
J2リーグ戦を6位で終え、プレーオフ準決勝(12月1日長崎戦)を待たずに最終戦翌日に続投が決定したベガルタ仙台の森山佳郎監督。2021シーズン19位でJ2降格以降、毎年監督を交代している仙台では、指揮官続投自体、渡邉晋監督(2014-19)以来だ。
J1昇格した横浜FCに対しては“ダブル”を達成。優勝した清水にもホームのユアテックスタジアム仙台で勝利(3-2)。3位の長崎にも1勝1引き分けで、大いに上位戦線を掻き回した仙台。クラブ創立30周年の節目のシーズンで最終節のホーム大分トリニータ戦(2-1)での勝利で、プレーオフ圏内に滑り込んだ。
強化の裏には、2023年6月にGM(ゼネラルマネジャー)に就任した庄子春男氏の存在がある。富士通サッカー部で現役を終え、1995年からは創設間もない川崎フロンターレの運営に携わり、強化本部長を歴任し、エグゼクティブアドバイザーだった2023年3月に退任。故郷である仙台に請われ、フロント入りし、チーク改革を託された。庄子氏の言葉によれば、「リフォームというより建て替え」という状態だったという。抜本的にクラブを変革するべく、前U-17日本代表監督で育成に定評のある森山氏を新監督に招聘。コーチ陣も一新した。
前2023シーズンには16位と何とかJ3降格を免れたチームから、一気にJ1昇格を狙えるチームに変え、プレーオフの結果を待たず森山監督の続投を決めたことで、庄子GMの改革は成功したといっていいだろう。平均観客動員数も、2023シーズンの1万1,215人から今2024シーズン1万2,912人と、前年比約115%で回復し、終盤線のホームゲームではチケット完売も相次いだ。
13ゴールを記録したFW中島元彦や、9ゴールのMF相良竜之介といった若い力がチームを牽引し、伸びしろを感じさせる。例えプレーオフで敗れたとしても、来2025シーズンは自動昇格の2位以内を狙えるだろう。
モンテディオ山形:渡邉晋監督
評価:★★★★☆/続投可能性:90%
2014シーズン途中から2019シーズンまで、ライバルであるベガルタ仙台の監督を務めていた渡邉晋監督。2021シーズンにレノファ山口を挟み、2022シーズンモンテディオ山形のコーチに就任、2023シーズン途中に解任されたピーター・クラモフスキー監督の後任として、監督に就任した。
就任シーズン、いきなりチームを5位に押し上げ、昇格プレーオフに導いてみせた(準決勝の清水戦でスコアレスドロー、レギュレーションにより敗退)。そして今2024シーズン終盤、怒涛の9連勝で4位にまで順位を上げ、再びプレーオフ切符をつかむ。
山形はプレーオフ進出チームの中で唯一、外国人助っ人のいないチームだ。この事実だけで、渡邉監督がいかに優れた指揮官であるかを証明している。夏の補強で、鹿島アントラーズから地元出身のMF土居聖真を獲得した第25節以降、12勝1敗1分けという驚異的な成績を収め、土居自身も5ゴールを記録し、チームに貢献した。
正式発表には至っていないが、渡邉監督の続投は既定路線であることは間違いないと思われる。気掛かりな面があるとしたら、J1クラブから引き抜きに遭うケースだろう。
いわきFC:田村雄三監督
評価:★★★☆☆/続投可能性:80%
いわきFCは、東日本大震災を機に2012年に前身クラブが創設され、2015年アンダーアーマーの日本法人が運営権を譲り受け、社長に就任した元柏レイソルFW大倉智氏が「いわきを東北一の都市にする」と宣言した上で、福島県リーグからJ2昇格までわずか8年(その間、7回優勝&昇格)で到達した。
県リーグ時代からJFLまでチームを率いていた田村雄三監督がS級ライセンスを取得していなかったため、J3昇格と同時に村主博正氏に監督の座を譲り、自身はスポーツディレクターに就任したが、2023年にS級ライセンスを取得したことと、チームがJ3降格圏に低迷していたことを受け、シーズン途中に再び監督に就任。チームを立て直し、J2残留へと導いた。
充実したクラブハウス「いわきFCパーク」を拠点にフィジカルを徹底的に鍛え上げ、当たり負けしない選手を揃え、福島県1部リーグ時代の2017年の天皇杯では北海道コンサドーレ札幌を相手に5-2で圧勝するなど、これまでにないアプローチでチームを強化してきたが、J2にまでカテゴリーが上がるとフィジカルだけでは通用しなくなり、2023シーズンは18位に終わる。
今2024シーズンは、フィジカルに加え走力にも磨きをかけ、一時は昇格プレーオフ争いも演じたが、最終的には9位でフィニッシュとなった。それでもクラブの歴史そのものでもある田村監督を交代させるメリットは少なく、現体制が継続される可能性は高いだろう。
水戸ホーリーホック:森直樹監督
評価:★★★☆☆/続投可能性:100%
2023シーズンから指揮を執っていた濱崎芳己監督の下、悲願のJ1昇格を目指した水戸ホーリーホックだったが、 2024シーズン第12節までで2勝(6敗6引き分け)の序盤戦を受け、5月4日に濱崎監督を解任。ディベロップメント(戦術)コーチを務め、暫定的に指揮を執っていた森直樹氏が昇格する形で新監督に就任した。
正式に森監督が就任した第14節以降、25試合で勝ち点33と持ち直した水戸だったが、J1昇格どころか、J3降格を回避するのがやっとの15位フィニッシュ。本人は「残留を達成したことには満足」としておりチームも続投の方針を固めたとされているが、現実的にはJ1昇格など夢のまた夢で、来季も再びJ2残留がミッションとなりそうだ。
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