日本代表が見せてしまった隙
相手の守備の段取りを察知し、当意即妙な立ち位置でパスワークを司った守田と、持ち前のドリブルスキルでサイド攻撃を牽引した三笘や久保。この3人の躍動により日本代表の攻撃は概ね機能していたが、今回の試合では僅かな隙が失点に直結してしまった。
同代表はFW上田綺世へのロングパスを時折織り交ぜたものの、最前線でのボールキープ(ポストプレー)が得意な同選手へのオーストラリア陣営の警戒心は強く、それゆえ同選手が空中戦を物にできない場面がちらほら。前半4分の守田からMF堂安律(右ウイングバック)、同18分の谷口から三笘へのパスなど、相手ウイングバックの背後を突くロングパスは効果的だったが、上田やセンターサークル近辺へのロングボールはことごとくオーストラリア代表の選手に跳ね返されていた。
後半13分の失点は、日本代表GK鈴木彩艶が繰り出したロングパスをオーストラリア陣営に回収されたことで喫したもの。鈴木のロングパスがふわりとした軌道ではなく、跳ね返されたボールの飛距離が伸びやすいライナー性であったこと、そしてそのボールが相手DFジェイソン・ゲリア(センターバック)の手前且つセンターサークル近辺に落ちたため、ゲリアのクリアボールがそのままオーストラリア代表の攻撃の起点になってしまった。
今年2月に行われたAFCアジアカップ準々決勝(イラン代表戦)でも、日本代表は後半10分にGK鈴木のロングパスを回収され、この直後に浴びた速攻から同点ゴールを奪われている。相手センターバックにライナー性のロングパスを弾き返された場合、このボールがそのまま相手チームの速攻や中央突破に繋がりかねない。ロングパスの送り先は相手にボールが渡ったとしても速攻に直結しにくく、相手GKとしても飛び出しづらいサイドバック(ウイングバック)の背後を原則とするのが得策だが、アジアカップのイラン戦と今回のオーストラリア戦で日本代表は同じような失点を喫している。アジアカップで得た教訓を、今回のW杯アジア最終予選で活かしてほしかった。
森保監督が明かしたチームビルディングの方針
今回のW杯アジア最終予選で、先発メンバーや基本布陣をほぼ固定している森保監督。オーストラリア戦後の会見で、ある記者からターンオーバー(先発メンバーの大幅入れ替え)を提案されると、現段階における自身のチームビルディングの方針を明かした。
ー先発メンバーが悪かったという意味ではありませんが、後半になると全体的に疲労が見られました。監督はどう感じていらっしゃいますでしょうか。また、これからの戦いを考えたときに、2試合(連戦)でうまくメンバーを替えていくことも考えますか。
「ゲームプランとして、できれば先行勝ち切り(に持ち込みたい)。アクシデントが起き先制されたとしても、後半にギアを上げて追いつく勝ち切るというのを想定してメンバー編成をしました」
「(選手の)コンディション面で言えば、ターンオーバーをするのが正解かもしれません。けどトレーニングをゼロに戻して“1”から始めて、原則的なところから始める(チームのプレー原則を試合の都度作り直す)ことで勝利の可能性や確率を上げられるかと言うと、今回の最終予選ではできるだけ選手を替えずに、トレーニングしたことや前の試合で経験したことを次の試合に活かしていけるようにと考えています」
ロングパスの球質や送り先をチーム内で共有しきれなかったこと。これが今回の連勝ストップの原因だと筆者は考える。ターンオーバーをすべきだったかを考える前に、プレー原則の共有・浸透が十分だったかを森保監督は振り返る必要があるだろう。
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