Jリーグ 鹿島アントラーズ

中後新監督就任で鹿島アントラーズは勝負強さを取り戻せるか

ランコ・ポポヴィッチ監督(左)中後雅喜監督(右)写真:Getty Images

10月6日、鹿島アントラーズのランコ・ポポヴィッチ監督の契約解除が発表された。明治安田J1リーグ第33節アルビレックス新潟戦(デンカビッグスワンスタジアム)4-0の快勝の翌日とあって、そのニュースは驚きをもって受け入れられた。

しかし、その前週の第32節の湘南ベルマーレ戦(レモンガススタジアム平塚)では、前半27分までにDF濃野公人の2得点でリードしていたにも関わらず、その後3失点を喫し大逆転負け。さらにその前週の天皇杯準々決勝ヴィッセル神戸戦(0-3)で完敗していたことが“決定打”となった形だ。同時に、ミラン・ミリッチコーチと吉岡宗重フットボールダイレクター(FD)の退任も発表された。

ポポヴィッチ前監督の招聘から、鹿島の歴代監督について、また、10月9日に発表された中後雅喜新監督下新体制について深掘りしよう。


ランコ・ポポヴィッチ監督 写真:Getty Images

ポポヴィッチ監督招聘まで

旧ユーゴスラビア出身(現在はセルビアとオーストリアの二重国籍)のポポヴィッチ前監督は、パルチザン・ベオグラード(セルビア)でプロキャリアをスタートさせ、SKシュトゥルム・グラーツ(オーストリア)では3大会連続でUEFAチャンピオンズリーグ(CL)に出場し、2002年、選手兼監督として在籍したTuS FCアルヌ・フェリス(オーストリア)で、現役引退と同時に指導者の道を歩み始めた。

2006年、同胞のミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現北海道コンサドーレ札幌)のサンフレッチェ広島監督就任に伴いコーチに就任。2007年から2009年にかけては、母国のFKスパルタク・スボティツァの監督を務めた後、2009シーズンの大分トリニータを皮切りに、2011シーズンは当時JFLの町田ゼルビア、2012-2013シーズンはFC東京、2014シーズンはセレッソ大阪と、日本のクラブを転々とした。

その後も2014-2015シーズンにはスペインのラ・リーガ2部のレアル・サラゴサ、2016-2017シーズンには、タイ・リーグ1の強豪ブリーラム・ユナイテッドの監督を務めている。

“東欧のブラジル”と呼ばれた旧ユーゴ出身らしく、攻撃的サッカーを志向し、2018シーズンのアジアチャンピオンズリーグ(ACL)優勝以来、タイトルから遠ざかっているチームに再び栄冠をもたらすべく、期待を込めて2024年に鹿島に招聘された。


鹿島アントラーズ 写真:Getty Images

直近5年で5回目の監督交代となった鹿島

しかし、鹿島のチーム編成はポポヴィッチ監督の戦術をピッチで表現できる選手を揃えたとは言い難かった。また、選手起用も固定化され、出場機会のない選手との確執も囁かれ、練習の雰囲気が良くなかったことも更迭の要因だったと言われている。

これで、直近5年で5回目の監督交代となった鹿島。2019年にメルカリに買収されてから、J1リーグで3位、5位、4位、4位、5位と、あと一歩の成績が続いている。メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏も「トップとしてこの結果を重く受け止めています」と謝罪する一方、「中長期的な視点に立った強化戦略」を取ると声明を出した。

そして10月9日に新体制が発表され、中後雅喜氏が内部昇格の形で新監督に就任。さらにスカウトだった本山雅志氏と、U-23日本代表コーチを務めた羽田憲司氏のコーチ就任、また、プログループマネージャーを務めていた中田浩二氏のFD就任も同時に発表された。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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