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ソニー仙台FCの解散で明らかになった“実業団サッカー”の限界

日本サッカー協会 写真:Getty Images

地域密着型クラブが抱える経営上の課題

今回のソニー仙台の解散の報は、地域密着型クラブが抱える経営上の課題も浮き彫りにした。スポンサーや経済基盤が弱いクラブにとって、安定した運営は非常に難しく、ソニーのような世界的大企業の支援を受けても長期的な存続が難しいことが明らかにされたのだ。

他のアマチュアクラブにとっても、経営基盤をどう強化するか、地域社会とどのように持続的な関係を築くかが、今後の大きな課題となる。それが不可能と分かった時点で、ソニー仙台と同じ決断を下すクラブが出てきても不思議ではない。

また、JFL全体にとって、ソニー仙台の退会はリーグレベルや魅力に影響を与えるだろう。長い歴史を持ち、2015シーズンにはJFL優勝も果たし、Jリーグ入りを目指すクラブにとって“門番”と呼ばれたクラブが解散することは、リーグにとっても悪影響しかない。

この“事件”を契機に、JFLや地域リーグ全体でのクラブ運営モデルの見直しが促される可能性もある。企業に頼ったクラブ運営だけではなく、地域コミュニティーが主体となってクラブを支えるモデルや、ファンとの協力による持続可能な運営方法の模索が進むだろう。

ソニー仙台が解散を発表する前段で、クラブチームとしての存続を模索したのかどうかは不明だが、半世紀を超える歴史にあっさりとピリオドを打った決断には、やや冷酷な印象を受ける。


ソニー仙台の解散は、日本のサッカー界にとって1つの時代の終わりを告げるものであり、同時に新たなクラブ経営の手法を模索する契機ともなり得るだろう。さらに、Jリーグ昇格を目指すクラブと、そうではない企業クラブを同一リーグで戦わせることへの疑問の声が上がる可能性もある。

地域サッカーの未来をどのように築いていくか、そして「プロとは何か」「アマはどうあるべきか」といった双方の在り方も含め、今後の日本サッカー界の重要なテーマとなるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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