天皇杯(JFA第104回全日本サッカー選手権大会)の4回戦が、8月21日に各地で行われた。湘南ベルマーレはパナソニックスタジアム吹田にてガンバ大阪と対戦。最終スコア2-3で敗れ、同大会敗退が決まっている。
2024明治安田J1リーグで、J2降格圏(18位以下)との勝ち点差1の17位に沈んでいる湘南。今年のYBCルヴァンカップと天皇杯から姿を消したため、今季終盤はリーグ戦に専念する形となった。
今回のG大阪戦から窺えた、湘南のJ1残留に向けたポジティブな要素と課題は何か。ここではこの点に言及していく。現地取材で得た湘南MF田中聡の試合後コメントも、併せて紹介したい。
奥野耕平が躍動
この試合における両チームの基本布陣は、湘南が[3-1-4-2]でG大阪が[4-2-3-1]。この日気を吐いたのが、インサイドハーフとして先発した湘南MF奥野耕平だった。
G大阪が自陣後方でパスを回した前半10分、奥野が中盤から飛び出し、相手DF福岡将太(センターバック)にプレスをかける。これにより福岡のバックパスを誘うと、湘南がG大阪のパス回しを左サイド(G大阪の右サイド)へ追い込んだ。
その後G大阪のDF中谷進之介(センターバック)の縦パスを、湘南MF山田直輝が奪取。ここから湘南の遅攻が始まると、同クラブMF小野瀬康介の横パスを受けた奥野がペナルティアーク内からミドルシュートを放ち、先制ゴールを挙げた(得点は前半11分)。
このゴールは奥野が中盤から飛び出し、自軍のハイプレスの起点となったことから生まれたもの。これ以降も奥野は自陣と敵陣を行き来し、湘南の守備に貢献した。
守備面で汗をかくだけでなく、自陣と敵陣を行き来してパス回しを司るのも、湘南インサイドハーフに求められる役割。リーグ戦では茨田陽生と池田昌生の両MFがこの役割をこなしており、攻守両面においてこの2人にかかる負担が大きかった。奥野がインサイドハーフとして出色の出来栄えを披露したことは、J1残留争いに巻き込まれている湘南にとってポジティブな要素だ。
良い攻撃配置から生まれた2点目
前半14分にG大阪FW山下諒也のミドルシュートを浴び、湘南は1-1の同点とされたものの、良い攻撃配置から2ゴール目を挙げた。
湘南が自陣後方からパスを回した前半35分、同クラブDF髙橋直也(センターバック)がボールを運び、右サイドに立っていた奥野へパスを送る。その後G大阪最終ラインの背後へ走ったDF岡本拓也(右ウイングバック)が奥野のパスを受けると、ゴール前へクロスボールを供給。これにFW鈴木章斗が右足で合わせ、ゴールネットを揺らした。
ここではセンターバック髙橋とウイングバック岡本の間へ奥野がタイミング良く降りたことで、右サイドへのパスルートが開通。センターバックとウイングバックの距離が開きすぎることで、パス回しが困難になる場面が直近のリーグ戦で散見されたものの、この試合ではインサイドハーフ奥野の好判断から素晴らしいゴールが生まれた。
また、髙橋がボールを運ぶ直前には中盤の底の田中聡が最終ライン付近へ降りることで、G大阪MF山田康太を幻惑。キックオフ直後からトップ下の山田康太が田中聡に張り付き、湘南最終ラインからのパス回しを妨害していたが、田中が突如ここへ降りたためG大阪はハイプレスのかけ始めのタイミングを逸した。奥野と田中がこのゴールの起点と言えるだろう。
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