「自分が二人いるみたい」
ネガティブなメンタルで試合に臨むことは、プレーに様々な悪影響を及ぼす。高木の場合、自身の持ち味であったシュートへの積極性を失わせた。
「難しく考えすぎていて、当たり前のプレーができない状態でした。とにかくミスをしないように立ち回ることだけを考えてトライできずにいた。特にシュートを外すことに対してナーバスになっていたので結果的にクロスの選択が増えていましたが、それだけだとFWとして怖さがないことは明らかです。相手からしても、何か仕掛けてくる選手だと常に思われていないといけませんから」
続けて高木は自身のメンタルに触れた。「自分のメンタルは極端すぎて、まるで自分が二人いるみたいな感覚。メンタルが良くないときのパフォーマンスは『本当に自分か?』と疑うくらい酷いと思います。今シーズンも『もうダメかもしれない』と思うときがありましたし、メンタルの部分はアマチュア時代から続く自分の短所だと思います」と苦戦を強いられたシーズン序盤を回顧した。
初スタメンとなった第18節までの出場時間はわずか128分(リーグ戦のみ)に留まり、ゴールやアシストといった結果も出せずにいた高木。33歳という年齢を考慮すれば、スタメンの機会が失われても仕方ないのかもしれない。しかし、日々の練習から貪欲に持ち前のクオリティを発揮し続けていた高木を信頼したからこそ、小林監督はチームとして重要な位置づけであった岡山戦に先発出場させたのだろう。このような場面でプレー機会を与えられたことにより、高木は徐々に本来の持ち味と自信を取り戻していった。そして迎えた6月12日。天皇杯第2回戦(対中京大学)に先発すると、1ゴール1アシストの活躍でチームを勝利に導いた。
「周りの人に支えてもらい、なんとか腐らずにやってこれました。その結果として少しずつ試合に出れるようになり、天皇杯では結果も出せたと思います。その意味では自分を評価したいですし、またひとつ自信に繋がりました」と前向きな言葉を残している。
「どんな相手にとってもチャレンジャー」
高木自身が短所であると語ったメンタル面。裏を返すと、そこさえクリアできればスーパーなFWになり得る。「メンタルが上振れたときには自分でも評価のできるパフォーマンスができると思っているので、その振れ幅を小さくしていかなければいけません。フィーリングは良くなっていますが、もっと怖さを出せる選手にならなければいけない。ゴール前に侵入して得点に絡みだすことで余裕が生まれると思います。その余裕から、いい意味で遊び心をもったプレーができれば、より柔軟な発想が生まれる。そのような好循環の中に身を置ければ、何でも試してみようと思える強い自分になれます」と、短所を克服することで到達できる上のステージを見据えていた。
千葉は6月30日に鹿児島ユナイテッド(現16位)、7月6日に清水エスパルス(現3位)、14日にロアッソ熊本(現18位)と対戦するが、いずれのチームにも前半戦では勝てていない。「同じ相手に何度も負けられないことは確かですが、そこにこだわりすぎてもいけないと思っています。栃木戦では自分たちがチャレンジャーであるという意識が前回対戦によって薄れていたのかもしれない。今の僕たちは、どんな相手にとってもチャレンジャーですし、その姿勢をブラさずにやっていきたい」と高木が語るように、栃木が魅せたチャレンジャーとしてのメンタリティーを、今度は千葉が持つ番だ。
サイドのアタッカーとして再び相手の脅威となるプレーを見せている高木の自信は、試合を重ねるごとに増している。現在の自分を「変にミスを恐れず、大胆にいられるメンタル」と分析した高木。それはまさにチャレンジャーそのもの。ベテランの年齢となった高木だが、チームと共にチャレンジャー精神を携え後半戦に向かう。
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