クロアチア代表 EURO

PKを外したモドリッチはなぜ直後に得点できたのか?【ユーロ2024】

ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

失敗で落ち込むのではなく逆にギアがアップ

モドリッチのPKは、GKドンナルンマに完全にボールを見極められて止められた。精神的なショックで膝から崩れ落ちてもおかしくはない。

しかし、モドリッチは得点機を逸した直後に、精神的な空白がなく、逆にギアが上がった。プレーを続け、次の瞬間には味方のシュートのセカンドボールを狙ってゴール前に詰めていたのである。

気持ちが落ち込んで動じるのではなく、逆に集中力が上がったようにすら見えた。セカンドボールを拾ってシュートを打つというのは、プレーと集中力の連続性があってこそ生み出される。

また、こぼれ球を拾って得点するというのは、泥臭く汗をかいた者に運次第で訪れるご褒美だ。心理的に切れそうな場面で、無駄走りになるかもしれない地道なプレーにモドリッチは徹した。

どんな時もメンタルが崩壊しない。それがモドリッチの真の強さなのである。


ロブロ・マイェル(左)ルカ・モドリッチ(右)写真:Getty Images

チームメイトに魂が乗り移るカリスマ

モドリッチは60分に、勢い余ってレイトタックル(遅れたタックル)をして警告を受けた。

80分にモドリッチと交代で出場したMFロヴロ・マイェル(ヴォルフスブルク)は、その2分後に後方から挨拶代わりのタックルでイエローカードをもらった。そのプレーはモドリッチのファウルと瓜二つで、まるで魂が乗り移ったかのようだった。

言葉で説明するのは難しいが、後ろ姿から醸し出されるオーラがあり、周囲の人々を感化させるカリスマがあるモドリッチ。実力もさることながら、キャプテンマークを巻くのにふさわしい精神性の持ち主だ。

結果が伴わないクロアチアには、ベテランを外すべきという論調がある。モドリッチは大ベテランの領域だが、この試合でもクロアチア随一の高いパフォーマンスを発揮した。年齢が理由で、メンバーから外すのは見当違いである。

今後の国際大会で、もし加齢とともに調子を落として先発落ちをすることがあっても、ベンチに置いておくべき選手だ。それだけ秀でた精神力とリーダーシップの持ち主なのである。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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