クロアチア代表 EURO

PKを外したモドリッチはなぜ直後に得点できたのか?【ユーロ2024】

ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

UEFA欧州選手権(ユーロ2024)で、日本時間6月25日にグループBの最終戦でイタリア代表と対戦したクロアチア代表。キャプテンのMFルカ・モドリッチ(38歳/レアル・マドリード)が先制した。しかし90+8分にイタリアの同点弾を許し、試合は1-1で引き分けという劇的な幕切れとなった。

全体としてイタリアの試合だったと言っていいだろう。そこで千載一遇のPKを得たが、クロアチアは決めることが出来ず。そんな困難な状況でモドリッチは、どのようにしてユーロ史上最年長得点をするに至ったのだろうか。小さな巨人の不屈のメンタルに迫る。

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ルカ・モドリッチ 写真:Getty Images

2試合連続でATに追いつかれ、勝点4を失ったショック

アディショナルタイム(AT)が8分と提示され、イタリアが得点したのは90+8分だった。それはイタリアのラストチャンスと言ってもよかった。終了のホイッスルとともに、ピッチに倒れ込み天を仰ぐクロアチアのイレブン。試合後、サポーターに挨拶に行くも、涙を流し放心状態で立ち尽くす。最後の最後で勝利を逸したのだから、何ら不思議ではない。

しかも、19日に行われたアルバニア代表との試合では、90+5分に失点し2-2に終わった。つまり、クロアチアは2試合連続でアディショナルタイムに追いつかれたのだ。この精神的ショックは、実際に味わった者でないと分からないかもしれない。

しかし、赤い目のモドリッチは白い肌を紅潮させながらも、手をたたいてスタンドに向かって歩き、積極的にサポーターに感謝のメッセージを送っていた。試合が終わっても本当に最後までキャプテンの役割を全うしたのである。

実はこの姿勢こそが、モドリッチの先制弾の源となったものだ。すでに試合が終わっているのに「なぜ?」と思うかもしれない。


ジャンルイジ・ドンナルンマ 写真:Getty Images

モドリッチ得点シーン:PKを外してセカンドボールに詰める

モドリッチの得点シーンを振り返ってみよう。

52分にペナルティエリア内でクロアチアのFWアンドレイ・クラマリッチ(ホッフェンハイム)が右足でシュートして、MFダヴィデ・フラッテージ(インテル)の左手に当たりPKを獲得した。

54分にそのPKのキッカーとなったモドリッチが右足で蹴るも、イタリアGKジャンルイジ・ドンナルンマ(PSG)が反応し止められる。

観衆がざわつくなか、クロアチアの攻撃が続き、右サイドからのボールにFWアンテ・ブディミル(オサスナ)がシュートし、GKが弾いたセカンドボールにモドリッチが左足で詰めて得点した。38歳289日で史上最年長ゴールだ。

得点をしたのは55分で記録上は1分後だが、実際にはPK直後のプレーであり、それ以下の時間で得点した。

モドリッチが得点シーンに居合わせたのは、PKを蹴った直後だから、そのままゴール前に留まったというのも一つの理由だ。しかし、それ以上に重要な要因がある。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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