EURO イングランド代表

イングランドはなぜ苦戦したのか?ピクシー率いるセルビアの猛追劇【ユーロ2024】

ドラガン・ストイコビッチ監督(ピクシー)写真:Getty Images

イエローカードもらうピクシー

選手の交代枠を使い切ったあともピクシー(ストイコビッチ監督)は精力的に動いた。そして執拗に審判に抗議して83分に警告を受けたのである。

後ろに引いて守備のブロックをつくるイングランドを相手にゴール近くでのプレーがなかなかできずに、最後まで追いつくことは出来なかったセルビア。しかし74分までに交代選手を全て使い切ったピクシーは思い切りがよかった。強豪を相手に状況を打開すべく、大胆になるしかなかったとも言える。なかなか火がつかなかったが、ようやく小さな煙が立ち上り始めたのを狼煙に、矢継ぎ早にどんどん薪をくべていって炎を大きくしていく。そのようなイメージだ。

結果は伴わなかったが、前半の絶望的な試合内容から、後半は五分五分の勝負にまでもっていった。セルビアのベンチワークは今後に期待を感じさせる。

前半の攻撃回数は、イングランドの19回に対してセルビアは6回だった。それが試合終了時には、31回に対して30回になっていたのだから、後半にかなり追い上げたことが分かる。

しかし最後は、自力に勝るイングランドが勝ち星を手にした。


セルビア対イングランド 写真:Getty Images

場外戦で流血の惨事、機動隊が出動し逮捕者も

同試合キックオフの前には、ゲルゼンキルヒェン市のバーの外でセルビアとイングランドのサポーターが衝突。テーブルや椅子が飛び交う大乱闘となり、ドイツ警察の機動隊200人が出動して鎮圧した。この事件で負傷者が出ている模様だ。

この試合に関連して、少なくとも7人のセルビアサポーターが逮捕されたという。

ドイツ警察当局は、セルビア対イングランドで過激なセルビアサポーターが暴力事件を起こそうとしているとして「高いリスクがある」と事前に警告していたが、それが現実となってしまった。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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