浦和レッズ 女子サッカー

【独占】レッズレディース栗島朱里「引退よぎった重傷からの完全復活」インタビュー前編

伊藤美紀(左)栗島朱里(右)写真提供:WEリーグ

「待ってるよ」が支えに

ー手術が終わり、リハビリ生活に入りました。「与えられたタスクをこなすだけの日々で、気持ちは上の空だった」と過去のインタビューで仰っていましたが、一体何が栗島選手をそのような気持ちにさせたのでしょう。

栗島:前十字靭帯を断裂すると、長い期間リハビリしないと競技復帰できない。自分は復帰まで1年でしたけど、何年もかかる場合もあります。すぐに復帰できないのは分かっていましたし、1回目の苦労(リハビリ)も覚えていたので。受傷日から手術日まで時間が無かったので、心の整理がついていなかった部分もありますね。

藤野のWSL初ゴールでマンチェスター・シティがスパーズに勝利
Keep WatchingNext video in 8 seconds
 

リハビリも最初は地味なこと(トレーニング)しかできないですし、みんな(チームメイト)は試合をこなしているのに、自分はサッカーをできない。その代わりに長いリハビリが待っているということで、気持ちが入らない。このときは本当に上の空という感じでしたね。

ーそうした状況下で栗島選手の心の拠り所になったもの、支えになったものは何でしたか。

栗島:家族はもちろん、そしてチームメイトですね。松葉杖で歩けるようになった頃、長船加奈選手とか高橋はな選手とか……。いろいろな選手が私のところに来てくれましたし、元気づけてくれましたね。チームメイトのみんなと会うと、本当にテンションが上がります。みんなに会って元気をもらいながら、リハビリをこなしていました。

ー会いにきてくれるだけでも、栗島選手にとって支えになったと思います。チームメイトがかけてくれた言葉で一番嬉しかったもの、支えになったものは何でしたか。

栗島:何年も前のことなので忘れましたけど(笑)、「待ってるよ」とみんな言ってくれましたね。待ってくれている人がいるという事実だけで、自分のサッカー人生終わっていないなと思えましたし、待ってくれている人がいる限り自分は頑張らなきゃいけないとも思いました。

ーそうした大変な状況のなかでも、地味なタスクをしっかりこなせる。人としての強さが感じられるこの栗島選手のパーソナリティーを、私は魅力に感じます。

栗島:1回目のリハビリで、やるべきことをやらないと復帰できないのは分かっていました。若い頃は何も考えずにできたことも、年をとっていろいろな経験をしたことで逆に怖くなった部分はありましたね。逆に言えば(地味なトレーニングを)やっていけば大丈夫というのは知っていたので、ひとつずつこなせたのだと思います。

ー強さとは、メンタルが揺れ動かないことではない。揺れ動いたなかでもやるべきことをやれるのが真の強さだと、私は栗島選手から学びました。

栗島:本当にそう思います。気持ちが上の空のときもありましたけど、やるべきことは変わらないですし、やらない限り競技復帰できる未来はないので。どんな状況でも、やるべきことをまずやる。心が付いてこないときもありますけど、そのときはそんな自分を認めてやるしかない。やるべきことは必ずやるようにしていました。


栗島朱里 写真:©URAWA REDS

医師から受けたまさかの宣告

ー術後4か月の段階で、医師から「膝が曲がっていない(曲げ伸ばしが十分にできていない)」と宣告されました。このとき、栗島選手はどんな心境に陥りましたか。

栗島:実は自分も、(膝の状態が)あまり良くないのかなと感じていました。大腿四頭筋(膝の上の筋肉)は付きやすいはずなのに、元の状態へ一向に戻らない。膝を伸ばしたときにも痛みがある。でもどうしたら良いのか分からない。リハビリがうまくいっていないと思っていたなか、医師から「膝が曲がっていない」と言われて……。分かってはいたんですけど、ショックでしたね。

「もっと早く、誰か教えてよ!」という気持ちになったんですけど、誰かのせいにしたところで何も始まらないし、それが事実なので。そのときに医師から、リハビリの一環としてお米入りの袋(重りになるもの)を毎日膝に乗せるよう言われました。

実はこれ、リハビリの最初の段階で医師から言われていたんですけど、私が忘れていて(笑)。このタイミングで気づかせてくれましたね。そこからはちゃんと、膝に重りを乗せるリハビリをしました。これが本当に痛くて。お米入りの袋を膝に乗せて、何分か経ったらそれを外して膝を曲げ伸ばしする。曲げ伸ばしが終わったら、またお米の袋を乗せる。これの繰り返しです。

これも地味な作業なんですけど、家でやっていたら膝の伸びが良くなりましたし、膝上の筋肉も付いてきました。そこから自信も付きましたね。

(後編に続く)

ページ 2 / 2

名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

筆者記事一覧