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【独占】町田ユース出身サイラス龍一に訊く「ベトナム強豪クラブ加入までの道のり」

サイラス龍一・チャン 写真:Becamex Binh Duong F.C.

「越僑枠」制度がもたらす効果

ービンズオンではトライアルを経ての加入となりました。既に1か月以上チームで練習されていると思いますが、チームの印象は?

サイラス:すごく歴史があるクラブだというのは聞いていましたし、多くのタイトルを獲得してきたクラブなので、しっかりしたチーム・組織だという印象を持っています。

ー監督からはどんな役割を求められていますか?

サイラス:僕自身は攻撃的なポジションの選手でもあるので、攻撃でアクセントをつけてほしいというのは常々言われています。攻撃時の豊富なアイデアだったり、自分にしかできない部分をどんどん出してほしいとは言われていますね。

ー今回「越僑枠」での登録となったわけですが、この制度自体をご存じでしたか?また、この制度はVリーグに対しどのように貢献すると思いますか?

サイラス:(越僑枠制度は)知らなかったです。ベトナムに行ける可能性があるという段階になって情報を色々と調べている中で初めて知りました。国外で生まれ育った選手がベトナムでプレーする機会が増えればベトナム人選手にとっても刺激になりますし、サッカーのスタイルが今後良い方向に変わっていくきっかけになるんじゃないかと思っています。

ー越僑枠でVリーグクラブに加入した選手としては、GKフィリップ・グエン(元チェコ代表)が後にベトナム国籍を取得し、現在はベトナム代表でプレーしています。将来的にはベトナム国籍取得や代表でのプレーなども視野にいれていますか?

サイラス:国籍取得までのプロセスや手続きで、どれぐらいの時間が必要なのかそれ次第というところもありますが、プロサッカー選手である以上高いレベルでやりたい気持ちはあるので、チャンスがあれば代表の試合にも出場してみたいです。

ービンズオン省での生活は慣れましたか?いざ生活してみて、驚いたことなどはありましたか?

サイラス:もう慣れました。街としても発展しているので、ここでの暮らしは気に入っています。驚いたこととしてはやっぱり交通ですかね。日本以外のアジアに住むのは初めてですから、バイクの数には驚きました。


サイラス龍一・チャン(右)写真:Becamex Binh Duong F.C.

新天地にかける想い

ーベトナムにルーツをお持ちですが、ベトナム語はどうですか?コミュニケーションに問題はありませんか?

サイラス:ベトナム語は全然話せないのでこれから勉強したいと思っています。通訳がいますし、英語が少し分かる選手もいるのでチーム内でのコミュニケーションは大きな問題にはなっていません。

ーベカメックス・ビンズオンと言えば、親会社の繋がりで川崎フロンターレと長い間協調関係にあります。ビンズオン省も日系企業が都市開発を手掛けていますが、日本人としては生活しやすい環境でしょうか?

サイラス:そうですね。日本人に優しい街という印象はあります。イオンモールもありますし、都市開発が急ピッチで進んでいる感じです。

ーシーズン後期からの加入となりますが、ビンズオンはシーズン前半戦を2位で折り返すなど好調です。チームは当然優勝を狙っていくと思いますが、個人として今季の目標があればお聞かせください。

サイラス:12~13試合を残す中で少しでも早くチームの勝利に貢献できるプレーをしたいですし、今後コンデションなども含めてベトナムサッカーに適応できる準備を整えたいと思います。チームの目標としては、リーグ優勝やACL(AFCチャンピオンズリーグ)出場があります。僕としても出来るだけ長くピッチに立つ時間を増やして、ここに来た意味というのを証明したいです。

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名前USAMI JUN
趣味:サッカー観戦、映画鑑賞
好きなチーム:ソンラム・ゲアン、名古屋グランパス、アーセナル

1981年生まれ、愛知県出身、ベトナム・ホーチミン在住の翻訳家兼ライター。2005年に日本語教師としてベトナムに渡り、語学センターや大学で教壇に立った後、2011年にベトナム情報配信サイトの運営会社に就職して編集長を務める。2013年にベトナムサッカー専門サイト「ベトナムフットボールダイジェスト」を立ち上げ。日本のサッカー媒体向けにベトナムサッカー関連記事を細々と寄稿中。

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