2023シーズン、当時J2の町田ゼルビアからJ1の鹿島アントラーズへ加入したMF佐野海舟は、開幕から出番を得て11月には日本代表としてのデビューも飾った。また、モンテディオ山形(J2)からガンバ大阪(J1)へ加入したDF半田陸も、途中怪我による離脱がありながら、出場した試合では右サイドで躍動。パリ五輪世代を代表するサイドバックも堂々のJ1デビューを果たしたシーズンとなった。
夏の移籍でも、藤枝MYFC(J2)から名古屋グランパス(J1)へ加入したMF久保藤次郎や、大宮アルディージャ(J2)からセレッソ大阪(J1)へ移籍したMF柴山昌也など途中加入ながら見せ場を作った選手も多くいる。近年注目されるいわゆる「個人昇格」の成功例が多く見られたシーズンだったと言えよう。
そして、今冬も多くの選手がJ2クラブからJ1クラブへ移籍を果たしている。ここでは、新たに個人昇格を果たした選手のなかから、2024シーズンの活躍が期待される選手たちを10名紹介していく。
家泉怜依
いわきFCから北海道コンサドーレ札幌へ
日本フットボールリーグ(JFL)からJ3へと昇格を果たし、2022シーズンにJリーグ初参戦となったいわきFC。そんな記念すべき年に加入し、初年度から33試合と多くの出場機会を得て守備の要を務めたのがDF家泉怜依だ。昨2023シーズンも同クラブで39試合に出場。屈強なフィジカルを武器に、地上戦でも空中戦でも強さを見せた。
移籍先である北海道コンサドーレ札幌では、今冬守備陣の主力であったDF田中駿汰がセレッソ大阪へと移籍。加えてキッカーとしても活躍していたDF福森晃斗も横浜FCへ期限付き移籍しており、家泉の出場機会も必然的に多くなりそうだ。
持ち前の高さと強さがJ1でどこまで通用するのか、そしてミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもとでどんな成長を遂げるのか。札幌の新戦力の中でもトップクラスに楽しみな選手の1人であることは間違いない。
井上詩音
ヴァンフォーレ甲府から名古屋グランパスへ
2023シーズンは大卒ルーキーながら30試合と多くの出場機会を得て、ヴァンフォーレ甲府で守備の要を務めたDF井上詩音。リーグ戦だけでなく、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)にも出場し年間を通してのチームの守備を支えたが、名古屋グランパスへの移籍が決定。2024シーズンはJ1の舞台でその空中戦や1対1の強さがどこまで通用するのかが注目される。
今冬の移籍市場で積極的に補強に動いている名古屋だが、守備陣ではDF藤井陽也が海外移籍。さらに守備の中心であったDF中谷進之介がガンバ大阪へと移籍した。加えて、ベテランDF丸山祐市もチームを離れたことで手薄になった感は否めない。
そんなチーム状況への加入なだけに、井上に懸かる期待は相当大きなものとなるはずだ。名古屋を去った日本代表クラスの選手たちと比較されるシーズンとなるだろうが、チームとしてはもちろん井上個人としての躍進にも期待したい。
野田裕喜
モンテディオ山形から柏レイソルへ
2019年にモンテディオ山形へ期限付きで加入し、2022シーズンに完全移籍して以降は守備の中核として活躍したDF野田裕喜。2023シーズンも39試合とほぼ全ての試合に出場し、身体を張った守備や攻撃でもセットプレーのターゲットとしてチームの2年連続となるプレーオフ進出に貢献した。
そんな野田はこの冬の移籍で柏レイソルへの加入が決定。柏は、昨夏に浦和レッズからの期限付きで加入し守備陣を支えたDF犬飼智也を完全移籍で獲得。さらにDF古賀太陽やDF立田悠悟といった日本代表経験者も在籍しており、野田にとってポジション争いを制するのは簡単でないだろう。
一方、昨年の柏が課題とした攻撃の部分では、縦パスやフィード精度が高くチャンスの起点になれる存在としても期待できる。2023シーズンは残留争いにも巻き込まれる厳しいシーズンを過ごした柏。そんなチームにおいて攻守両面で起爆剤となれるか、野田の働きに注目だ。
小野雅史
モンテディオ山形から名古屋グランパスへ
2023シーズン、大宮アルディージャからモンテディオ山形へ加入したMF小野雅史。加入初年度から38試合とフル稼働に近い出場機会を得て、山形の2年連続となるプレーオフ進出に大きく貢献した。特に攻撃面では、精度の高い縦パスで多くのチャンスを演出。サイドバックとして、守備だけでなく攻撃でも大いに存在感を発揮したシーズンだったと言えよう。
それだけに、名古屋グランパスへの移籍は山形にとって大きな痛手と言える。移籍先である名古屋では、2023シーズン主に左サイドの主軸を務めたDF森下龍矢が海外移籍。小野がどのポジションで起用されるか現時点で明確ではないが、昨年の山形で同サイドを務めた小野が森下の後釜として期待されている可能性は高く注目すべき選手の1人と言えよう。
昨年A代表デビューも飾った森下と比較されるであろう環境下で、初のJ1へ挑む小野の活躍に期待したい。
三浦颯太
ヴァンフォーレ甲府から川崎フロンターレへ
リーグ戦も終了し元日開催の日本代表戦を楽しみに待っていた昨年末、サッカーファンに驚きのニュースが飛び込んで来た。J2のヴァンフォーレ甲府に所属していた大卒ルーキーDF三浦颯太の代表入りが発表されたのだ。
結果的にこの冬、J1の川崎フロンターレへ移籍となったが、年間を通してJ2で戦ったルーキーの抜擢に驚いたファンも多かったことだろう。特別指定選手だった2022シーズンまでとは一転し、昨年は21試合と出場機会も大幅に増えた。
移籍先である川崎では、今冬長年チームを牽引してきたベテランのDF登里享平がセレッソ大阪へ移籍。チームにとって痛い流出であることは間違いないが、三浦にしてみれば大きなチャンスとも言える。2024シーズンを昨年以上の飛躍年にできるか注目だ。
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