いよいよ4試合を残すのみとなった2023明治安田生命J2リーグ。一時は独走態勢に入るかと思われた町田ゼルビアに対して、J1での経験が豊富な名門3クラブ(清水エスパルス、東京ヴェルディ、ジュビロ磐田)が追い上げを見せ、優勝争いは4クラブに絞られた状態で最終盤を迎えている。優勝争いはもちろん最注目ポイントだが、より熾烈になっているのが自動昇格圏争いだ。J1へ昇格できる3クラブのうち、自動昇格となるのは上位2クラブ。残りの1枠は3位から6位のクラブが昇格プレーオフによって争うレギュレーションだ。
首位を走る町田があと1勝で自動昇格圏内を確定させるのに対し、2位以下はまだまだ大混戦。現時点で自動昇格圏外のクラブにも大逆転の可能性は残っている。とはいえ、直近の戦績や勝ち点差で見れば、勝ち点60に乗せている5位のジェフユナイテッド市原・千葉までがより現実的な自動昇格圏争いのボーダーラインと言えよう。
ここでは、最後まで目が離せない展開が予想される自動昇格圏争いについて、現在1位から5位までの各クラブごとに残りの対戦カードや今季の戦績も踏まえて今後の展望を見ていこう。
町田ゼルビア(現在1位)
残りの対戦カードと今季戦績
- 第39節:ロアッソ熊本(第12節2-1)
- 第40節:ツエーゲン金沢(第3節2-1)
- 第41節:レノファ山口(第16節2-0)
- 第42節:ベガルタ仙台(第1節0-0)
今2023シーズンのJ2リーグを湧かせてきた町田ゼルビア。悲願のJ1昇格とJ2優勝までついにあと一歩のところまで来た。黒田剛新監督を迎え、冬夏それぞれ新戦力も多数獲得。まさにチーム改革の成功例を作ったと言えよう。だが、喜ぶのはまだ早い。これまでチームを牽引してきたエースFWエリキの負傷離脱後は成績が芳しくなく、3勝3分2敗と取りこぼしも見られる。残る4試合はいずれも下位勢との対戦が組まれているが、栃木SC戦(第34節0-1)、いわきFC戦(第37節2-3)と直近の敗戦も踏まえれば順位が離れている相手でも油断はできない。とはいえ、2位以下との勝ち点差が8と離れていることから、J1昇格という目標に対して必要な勝利はあと1つ。上記のとおり、残り4カードでの今季対戦成績が3勝1分であることを踏まえれば、自動昇格はほぼ確実と言えよう。
唯一気がかりな点があるとすれば、失点数が増えてきていること。連勝が無くなった第31節以降は9試合で11失点となっており、大勝する試合もある一方で勝ち点の取りこぼしにつながる要素にもなっている。昇格はもちろん優勝を確実なものとするためにも、ここで失点を重ね勝ち点をこぼし、2位以下のチームを勢いづけることは避けたい。対戦カード、戦績、勝ち点差とほぼすべての要素で昇格と優勝に王手をかけている町田。不安要素ゼロではないが、まずは次の1勝を早々に挙げ「J1昇格」という目標はクリアしておきたい。
清水エスパルス(現在2位)
残りの対戦カードと今季戦績
- 第39節:いわきFC(第14節9-1)
- 第40節:ロアッソ熊本(第20節1-0)
- 第41節:大宮アルディージャ(第11節3-0)
- 第42節:水戸ホーリーホック(第1節0-0)
開幕から7戦未勝利。昨年途中から指揮を執っていたゼ・リカルド監督の解任などもあり、前評判とは程遠いシーズン序盤を過ごした今季の清水エスパルス。だが、監督交代を経てチームの立て直しに成功し、7月以降は一時14戦負けなしとようやく期待通りの強さを示した。直近の3試合では、富士山ダービーとも呼ばれるヴァンフォーレ甲府戦で0-0と引き分け。また、静岡三国決戦と銘打たれたダービーでは1勝1敗(藤枝MYFC戦0-2、ジュビロ磐田戦1-0)と期待していたような結果は得られなかったが、磐田戦の勝利で自動昇格圏の地位に返り咲き最終盤を迎えている。
残り4つの対戦カードはいずれも現状ボトムハーフのチーム。自動昇格圏を争う3位以下のライバルたちが、軒並み上位勢との直接対決を控えている中では大きなアドバンテージを有していると言える。加えて今季大勝したカードも含まれており、内容、結果ともにチームがポジティブになれる要素を持っていることも大きい。しかし、まだまだ油断はできない。
今季、清水が1戦目で3点以上の差をつけたカードは全部で5つ(山口、大宮、いわき、藤枝、金沢)。そのうち、いわきと大宮とは2戦目が残っている。この5つのカードの中で1戦目と同様圧勝したのは金沢戦のみ(第18節3-0、第35節3-0)。山口には終盤の得点で辛くも勝利したものの(第30節1-0)、藤枝には敗戦(第37節0-2)。ここから対戦するいわきは首位の町田を倒しており(第37節3-2)、大宮は現在21位で残留争いの真っ只中にある。清水が優位に立っていることは事実だが、足元をすくわれる可能性も大いにある。このまま自動昇格圏にとどまれるか、残り4戦も油断は禁物だ。
東京ヴェルディ(現在3位)
残りの対戦カードと今季戦績
- 第39節:ジェフユナイテッド市原・千葉(第10節0-1)
- 第40節:ジュビロ磐田(第13節0-0)
- 第41節:栃木SC(第16節2-0)
- 第42節:大宮アルディージャ(第7節1-0)
シーズン序盤から4連勝を飾るなど、快調に勝ち点を積み上げてきた東京ヴェルディ。得点力では他の上位勢に後れをとっているものの、高い守備力を武器にここまで28失点はリーグ最少。城福浩監督体制の2年目にして高いチーム完成度を誇る。喫した9つの黒星のうち、現状ボトムハーフのチームとの対戦は第19節のベガルタ仙台戦のみ。残りの敗戦はすべて現在トップハーフに位置するクラブとの対戦で、結果論ではあるが下位からは確実に勝ち点を得ていることも安定した強さを示している。だが、残る4つのカードのうち2つが上位勢(千葉、磐田)との対戦で、自動昇格圏を争うライバルとの戦いだ。いずれも今季勝てていない相手であり、まさに明暗を分ける2連戦と言えよう。
冬にDFンドカ・ボニフェイスやFW佐藤凌我、夏にはMFバスケス・バイロンと主力選手の流出もあった今季の東京V。しかし、MF齋藤功佑ら新戦力の働きも目覚ましく、昇格のチャンスを掴める位置までチームを引き上げる原動力となっている。1つ上の自動昇格圏(2位)との勝ち点差はわずかに2。難しい試合が予想される10月の残り2戦、結果次第では最後まで可能性を残すのかそれとも脱落してしまうのかが分かれる重要な局面であり、J1復活に向け同じく黎明期からリーグを牽引してきた名門クラブとの連戦に臨む東京Vに改めて注目だ。
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