Jリーグ 湘南ベルマーレ

進歩が見られない湘南。G大阪戦で迫った降格危機【J1リーグ2023】

黒川圭介(左)畑大雅(右)写真:Getty Images

2023明治安田生命J1リーグ第24節の全9試合が、8月18日から20日に各地で行われた。同リーグ最下位の湘南ベルマーレは19日、敵地パナソニックスタジアム吹田でガンバ大阪と対戦。最終スコア1-2で敗れている。

今節も最下位からの脱出を逃し、J2リーグへの降格が現実味を帯びてきた湘南。戦術面の進歩はほぼ見られず、深刻なチーム状態だ。かねてより湘南が解決できていない問題は何か。ここではG大阪戦を振り返るとともに、この点について解説していく。


ガンバ大阪vs湘南ベルマーレ、先発メンバー

相変わらず悪いビルドアップ時の配置

この日も[3-1-4-2]の基本布陣で臨んだ湘南は、GKや最終ラインからのパス回し(ビルドアップ)がままならない場面がしばしば。原因はウイングバックの立ち位置の悪さだ。

前半5分の湘南の攻撃シーンは、まさにこの典型例。ここでは湘南のDF畑大雅(右ウイングバック)が基本布陣[4-1-2-3]のG大阪のFW宇佐美貴史の手前まで降りてボールを受けたため、相手のプレスの標的に。味方MF田中聡にボールを預けて一度は事なきを得たものの、今度はDF杉岡大暉(左ウイングバック)のポジショニングが悪く、アウェイチームは局面を打開できなかった。

杉岡が味方センターバックとほぼ同列の位置、加えて自陣のタッチライン際でボールを受けたことで、G大阪のDF髙尾瑠(右サイドバック)がここを急襲。髙尾のボール奪取からホームチームの速攻が始まり、MFファン・アラーノのスルーパスに反応したFWイッサム・ジェバリが湘南GKソン・ボムグンとの1対1の局面を迎えている。オフサイド判定に救われたとはいえ、湘南にとっては大ピンチだった。

湘南ベルマーレ DF畑大雅 写真:Getty Images

ウイングバックが自陣後方の大外のレーンや味方センターバックとほぼ同列の位置、もしくは相手のサイドハーフ(ウイングFW)の手前まで降りてボールを受けてしまう湘南の悪癖は、第11節柏レイソル戦あたりから改善されていない。これらの位置でウイングバックがボールを受けても、自身の傍にはタッチラインがあるため、左右どちらかのパスコースが消えてしまう。また、相手のサイドハーフやウイングFW、及びサイドバックのプレスをもろに浴びる立ち位置のため、ボールを失う確率も上がる。このデメリットが今節も如実に表れてしまった。

センターバックとウイングバックが大外のレーンで共存してしまい、この縦のパスコースを相手のサイドハーフ(ウイングFW)に簡単に封じられてしまう現象も、湘南は未だに修正できていない。センターバックやウイングバックが放つロングパスもG大阪陣営に読まれており、ゆえに湘南はボールロストを繰り返した。

ウイングバックは相手のサイドバックとサイドハーフ(ウイングFW)の中間エリア、もしくは相手サイドバック(ウイングバック)と正対してドリブルを仕掛けられる立ち位置をとる。GKや最終ラインからのパスコース作りは、中盤の底を務める田中や2インサイドハーフに任せる。こうすることで湘南は常に複数のパスコースを用意でき、相手にプレスの的を絞らせない攻撃を繰り出せるだろう。

Previous
ページ 1 / 2

名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

筆者記事一覧