4年に1度開催されるUEFA欧州女子選手権(女子ユーロ)。イングランドで開催された2022年大会で、同国が初めてチャンピオンに輝いたことは、未だ記憶に新しいことだろう。
ロンドンのウェンブリー・スタジアムで行われたイングランド対ドイツの女子ユーロ決勝(7月31日)では、大会史上最多となる観客数8万7192人を記録。スタジアムの最大収容数9万人に迫る盛り上がりとなり、まさにイングランドが女子サッカーの強豪国であり先進国でもあることを象徴する数字となった。
そんなイングランドに存在する数多くの女子サッカークラブの中でも、近年とりわけ注目を集めているクラブがある。ロンドン南部イースト・サセックス州のルイスを拠点とするルイスFCウィメン(イングランド女子2部)だ。いったい何が他のクラブと違うのか、早速紹介していこう。
ファンとの平等な構造
イングランド女子2部ウィメンズ・チャンピオンシップ(WSL2)に所属しているルイス。2021/22シーズンは全12クラブ中8位、2022/23シーズンは9位と、リーグ成績は決して良いとは言えない状況だが、地域のファンから寄せられるのは「冷ややかな視線」ではなく、むしろ「強い信頼」だ。
この理由のひとつとして、ルイスの株式は全てファンが運営する社会福祉協会(ルイス・コミュニティ・フットボール・クラブ)が所有しており、経営こそクラブスタッフが担当しているものの「クラブの所有者はファン」という構造を採用していることが挙げられる。クラブと地域は基本的に対等な立場にあり、クラブの存続も地域と密接に結びついているのだ。
6月14日に日本で開催された、女子サッカーの未来を考えるスポーツビジネスカンファレンス「Women’s Football Industry Conference 2023」では、ルイスの取締役であるルーシー・ミルズ氏も登壇し、次のように語った。
「ルイスには世界40カ国に計2500人程のオーナーが存在し(2023年4月時点)、人々は平等であること、そして異なる環境下で誰もが自由にサッカーをすることが可能になる未来を目指しています。私たちは、このクラブを『ルイス』という小さな街の資産にすることはもちろん、世界中の地域の資産にもしたいと思っています。そして、このクラブの基盤を活用し世界で巻き起こっている様々な問題について、解決策となる行動を起こして行きたいと思っています」
この地域に根差したクラブの活動理念が、ビジネスモデルとしての成功も導いているのである。
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