FIFAワールドカップ・カタール2022の決勝トーナメント1回戦が12月7日(日本時間)に行われ、ポルトガル代表とスイス代表が対戦した。
前半17分、ポルトガル代表が敵陣左サイドでのスローインで攻め込むと、ジョアン・フェリックスのパスを受けたゴンサロ・ラモスがペナルティエリア左隅で左足を振り抜き、先制ゴールをゲット。同33分にはブルーノ・フェルナンデスのコーナーキックからペペがヘディングシュートで得点を挙げ、ポルトガル代表のリードが2点に広がった。
後半も攻撃の手を緩めなかった同代表は、6分にディオゴ・ダロトの右サイドからのクロスにラモスが足で合わせ加点。同10分にも自陣からのパスワークでラファエル・ゲレイロがゴールネットを揺らし、スコアを4-0とした。
同13分に、スイス代表のDFマヌエル・アカンジがコーナーキックから追撃のゴールを挙げたものの、試合の流れを変えるには至らず。22分にラモスが相手GKヤン・ゾマーとの1対1を制し、ハットトリックを達成すると、アディショナルタイムには途中出場のラファエル・レオンが左サイドでのドリブルからゴールゲット。最終スコア6-1で、ポルトガル代表がスイス代表を下している。
4大会ぶりにベスト8進出を果たしたポルトガル代表のストロングポイントは何か。スイス戦を振り返りながら分析する。
パスワークの起点が複数存在
自陣後方からパスを繋ごうとした基本布陣[4-1-2-3]のポルトガル代表に対し、スイス代表が[3-1-4-2]の守備隊形でハイプレスを仕掛ける展開に。
ポルトガル代表の中盤の底ウィリアム・カルバーリョが、ペペとルベン・ディアスの2センターバック間、もしくはセンターバックとサイドバックの間へ降り、ビルドアップに関与。インサイドハーフのオタビオも時折2センターバック間へ降り、パスワークに加わっていた。
39歳のDFぺぺもコーナーキックからゴールを挙げただけでなく、タイミング良く相手の2トップの脇からボールを運び、遅攻の起点に。中盤と最終ラインの隊形変化が激しく、パススキルやボール運搬力が高い選手が揃っているポルトガル代表の遅攻を、スイス代表は次第に抑止できなくなった。
このポルトガル代表のパスワークが実を結んだのが、前半15分20秒以降の攻撃シーン。ここでもスイス代表の2トップに対し、ポルトガル代表が2センターバックとカルバーリョの計3人で3対2の数的優位を作ったうえで、ビルドアップを行っている。
ボールの奪いどころを定めきれないスイス代表は、[5-3-2]の布陣で自陣へ撤退。ゲレイロ、フェリックス、ベルナルド・シウバらが3セントラルMFの脇に立ち、そこでパスを捌いて攻撃のテンポを上げると、ゲレイロのパスを受けたB・シウバが敵陣ペナルティエリア左隅へ侵入し、ゴール前に惜しいクロスを送っている。ポルトガル代表の先制ゴールは、この直後のスローインから生まれた。
パスワークの起点が複数存在するポルトガル代表とは対照的に、スイス代表は中盤の底グラニト・ジャカを封じられた際のビルドアップのパターン不足を露呈。ジャカには基本的にB・シウバがマークに付き、スイス代表の自陣後方からのパスワークを手詰まりにさせた。攻守両面の多彩さや緻密さで、ポルトガル代表がスイス代表を完全に上回った試合と言えるだろう。
中盤の底のカルバーリョを封じられても、配球力が高いペペとディアスの2センターバック、足下の技術は折り紙付きのB・シウバ、オタビオ、フェリックスらが自陣に降り、遅攻の起点を担えるのが今のポルトガル代表の強み。この試合でクリスティアーノ・ロナウドに替わり先発した21歳のラモスも大車輪の活躍を見せており、前者抜きでも強豪国に対して互角以上の戦いができるだろう。相手のハイプレスを無力化するビルドアップを武器に、同代表が初のワールドカップ制覇を成し遂げるかもしれない。
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