Jリーグ セレッソ大阪

満開まであと一歩。C大阪が見せつけた攻守のクオリティー【ルヴァン杯試合分析】

セレッソ大阪 小菊昭雄監督 写真:Getty Images

整然とした守備を披露していたC大阪

昨年8月より指揮を執っている小菊昭雄監督のもとで、ハイプレスと自陣撤退守備を当意即妙に使い分けられるようになったC大阪は、この試合でも前半から緩みのない守備を披露。

上門と加藤の2トップが、広島の2ボランチへのパスコースを塞ぎながら3バックに睨みをきかせ、相手のパスをサイドに誘導。広島の左右のセンターバック(佐々木と塩谷司)や両ウイングバックを、毎熊と為田の両サイドハーフが捕捉し、これに連動する形で山中と松田の両サイドバックもハイプレスに加わっていた。

前述の先制ゴールの場面でも、タッチライン際でパスを捌いた広島のボランチ松本泰志に毎熊、野津田には奥埜が張り付き、佐々木のパスコースを限定。佐々木に対しても上門がプレスをかけ、バックパスを誘ったことが加藤のボール奪取に繋がっている。C大阪にとっては狙い通りの展開だっただろう。

セレッソ大阪 DFマテイ・ヨニッチ 写真:Getty Images

敵陣でのボール即時奪回が難しい場面では、[4-4-2]の隊形をミドルゾーンや自陣後方で形成。4バックでは埋めにくい、センターバックとサイドバックの間やハーフスペース(ペナルティエリアの両脇を含む、左右の内側のレーン)は、奥埜と鈴木の2ボランチが降りてカバーリング。ヨニッチが退場処分を受けるまでは、整然とした守備で広島を苦しめていた。

今季のJ1リーグで、チーム内最多の空中戦勝利数を叩き出しているヨニッチ(67回、データサイト『SofaScore』より)を試合終盤に欠いたことで、相手のクロスボールやセットプレーへの耐久力が低下。10人になったことで布陣を[4-4-1]に変えざるを得ず、相手のパスコースを限定するためのハイプレスも、ほぼ不可能に。試合全体を通じて質の高い攻守を披露できていただけに、C大阪にとっては悔やまれるファイナルとなった。

サンフレッチェ広島 FWピエロス・ソティリウ 写真:Getty Images

「広島とは四度対戦して、選手の頑張りで一戦一戦、土俵際まで追い詰めることができたことは選手の成長を強く感じています。今日のゲームプランも、選手たちは100%遂行してくれました。キャンプから積み上げてきた、攻守の規律を守ってハードワークする。そこはほとんどの時間で体現してくれたと思います。あとは本当に細部のところ。アクシデントが起きた中での私の引き出しを増やしていくこと、そこに尽きると思います。いろいろとトライしながら、私も選手とともに成長していきたいという思いでいっぱいです」

小菊監督自身も、退場者が出た後の策の乏しさを試合後の会見で悔やむとともに、今後の成長を誓っている(Jリーグ公式サイトより引用)。攻守のバリエーションが広がっているのは確かなだけに、満開の“桜(cerezo)”が咲き誇る日は、そう遠くはないのかもしれない。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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