セリエA ナポリ

ナポリはゼロから再スタートすべき。アンチェロッティ体制への移行が成立しない理由

写真提供: Gettyimages

今シーズン、ナポリは覚められない悪夢を見ている。10月23日にチャンピオンズリーグ(CL)グループステージで南野拓実が所属するザルツブルクに勝利してから、勝ち方を忘れたかのように1ヶ月以上も勝ち点3を取っていない。

この不調の原因は、今シーズン前の体制から生まれたわけではない。1年半前、カルロ・アンチェロッティ監督がこのチームにやってきた時から、クラブがあまり進化していないのが原因だろう…。

20年にかけて、ユベントス、ミラン、チェルシー、パリ・サンジェルマン、レアル・マドリード、そしてバイエルン・ミュンヘンの指導を担当した超一流監督であるアンチェロッティをナポリに呼んだことは、とても深いマネジメント戦略の意味を持っていた。

ナポリのデ・ラウレンティス会長は予算かけながら、マウリツィオ・サッリ監督が作った以上の強いチームをアンチェロッティが作り上げて、リーグ優勝を目指すと描いたに違いない。しかし、そのプランは少しずつずれた。

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アンチェロッティが呼ばれた理由と失敗

ナポリの当初の計画は、アンチェロッティの影響力で世界トップレベルの選手を呼ぶことだっただろう…。激しい選手の入れ替えと、チームの柱になれるような選手の導入が予測されていた。しかし、実際にそうはならなかった。

サッリが最後にナポリで指導をした2017/2018シーズンに一番使われた選手12人(シーズン中、2000分以上出場した選手)から、4人だけが別のクラブに渡った。レイナ、アルビオル、ハムシーク、そしてジョルジーニョだ。最初の3人は31歳を超えてからの移籍だったこともあり、次のステップ(世界トップレベルの選手を呼ぶ事)につながる予算が生まれなかった。

ナポリは未だにクリバリ、メルテンス、カジェホン、インシーニェ、ジエリンスキなど、サッリから育てられた選手に頼っている。アンチェロッティが指導者になってから獲得されて、このクラブにとって大事な戦力になったのはディ・ロレンツォとファビアン・ルイスのみです。

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サッリとアンチェロッティの戦術の違い

サッリ監督時代のナポリを観戦するのはすごく楽しいことだった。しかし、選手の負担がかなり大きかったと思われる。まず、高いプレスをかけ続けるため、切れないスタミナが必要だった。

サッリのナポリは歯車のようだった。全ての部品が試合できちんと動くことを確認するために、監督とスタメン選手は練習中に細かいチェックを積み重ねていた。そのため、サッリはターンオーバー(先発メンバーを大きく入れ替えること)をすることはあまり好まず、同じ選手を使い続けていた。そのことで、フロントやサポーターにたくさん文句を言われていた。

アンチェロッティが指導者になってから、ナポリのプレースタイルが明らかにかわった。安定をもたらす4-4-2システムのおかげで、守備が以前より固まった。攻撃はサッリ時代ほどの激しさがなくても、スムーズに進む展開が多く見られた。

そして、アンチェロッティが選手に教えたことの中で一番大事なのは、パターンに従うのではなく自分たちの頭で考えること、試合中に相手の戦略によって戦い方を変えることです。

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実際にアンチェロッティのやり方のおかげで、様々な選手が伸びてきた。クリバリは縛りなくプレーができるようになったことで、2018/2019年セリエAシーズンのベストDFとして選ばれるまでに成長した。ミリックは同シーズンにPKなしで20得点も稼いだ。ファビアン・ルイスはセリエA最強と呼ばれるほどのMFに進化した。そして、メルテンスはサッリ時代の時ほど目立たなくても、前シーズンもナポリの攻撃のキープレイヤーとなった(19ゴール12アシスト)。

しかし、インシーニェ、カジェホン、そしてアランには迷いが出ているような印象を受けた。アンチェロッティに求められていることがサッリの時と変わり、パフォーマンスに波を見せ始めた。

そして、2018/2019年シーズンが終わり、ナポリはフィットしていない選手のことを深く考えずに次のシーズンへ向かったのだ。

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名前Uccheddu Davide(ウッケッドゥ・ダビデ)
国籍:イタリア
趣味:サッカー、アニメ、ボウリング、囲碁
好きなチーム:ACミラン、北海道コンサドーレ札幌、アビスパ福岡

14年前に来日したイタリア人です。フットボール・トライブ設立メンバーの1人。6歳の時に初めてミランの練習に連れて行ってもらい、マルディーニ、バレージ、コスタクルタに会ってからミランのサポーターに。アビスパ福岡でファビオ・ペッキア監督の通訳も務めた経験があります。

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