Jリーグ 湘南ベルマーレ

“貴裁イズム”がシンクロした湘南。狙い通りの試合を糧にダービーへ

曺貴裁監督 写真提供:Getty Images

 DFラインを高く保ち、GKからショートパスでビルドアップしてくる神戸に対して、人を埋めていくかたちで圧力をかける。具体的には、右シャドーに入った菊地が山崎と2トップのような形で神戸の両CBにプレスをかけ、梅崎とこの日右のWBで先発した藤田征也がサイドハーフのような役割で相手SBを見る。そして杉岡と岡本がSBのように振る舞い、4-4-2に近いシステムで神戸の選手たちを完全に捕まえられるようなオーガナイズが見られた。

 神戸のビルドアップで重要な役割を担うCMの藤田直之に対して、湘南の両CMである秋野央樹と齊藤未月は激しくプレスに行き、前を向かせず、反対に藤田がCBに戻したボールに対して山崎や菊地がプレッシャーをかけてボールを奪い獲る、もしくはロングボールを蹴らせる守備を徹底していた。

 もちろんこのスタイルで1試合戦い抜くことなどできるわけはない。10分に先制できたこともあり、曺監督は用意していたのであろう、5-4-1のコンパクトなブロックを敷いてハーフスペースを使わせない守備に、徐々にシフトさせる。チームとしてスプリントを繰り返すことを要求されているだけあり、湘南の選手たちは走力を兼ね備えている。奪った後のカウンターも鋭い。そして前線へ飛び出す際の躊躇(ちゅうちょ)もない。藤田征也は前半だけで驚異の24回のスプリント回数を数えた。

 しかしそんな中でもサイドチェンジに近いボールに対して、菊地や梅崎のアプローチが遅れる場面が見られた前半を踏まえ、ハーフタイムには「守備のスライドを欠かさずにやること」を支持として出していた曺監督。的確な采配によって後半の湘南の守備は安定感を取り戻した。

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