ロシアメディア『RT』は「ロシアでの開催にケチをつけてファンを遠ざけようとした開幕前のネガティブなメディア報道とは裏腹に、2018年W杯は最高の大会になろうとしている」と、西欧でのネガティブキャンペーンを皮肉った。実際、懸念されたような大規模なファンによる暴力行為は報告されておらず、試合を訪れた各国のファンはホスト国に対する好印象を語っている。そして1日のスペイン代表に対するロシアの勝利は、さらに大会の盛り上がりに火をつける瞬間だった。
ボールから完全に目を離したセルゲイ・イグナシェビッチのやや滑稽なオウンゴールで試合序盤に先制を許した際には、事前の予想通りスペインが力の差を見せつけるかと思われたが、ホームチームはハーフタイム前にPKで同点に追いつくと素晴らしい集中力と闘争心で優勝候補に食らいついた。彼らのプレーはスペイン人にとっては美しくはなかったかもしれないが、7万8000人の大観衆に後押しされて勝利を追求した潔く泥臭い戦いは、全国民の期待を背負うW杯ホスト国としてのプライドを感じさせるものだった。
「後半は守りに入り、狙っていたPK戦に持ち込むことができた。神に感謝したい」と、PK戦でコケとイアゴ・アスパスのキックをセーブし英雄になったイゴール・アキンフェエフは率直に語っている。スタニスラフ・チェルチェソフ監督も「これが勝ち残るための唯一の道だと選手たちを説得しなければならなかった」と、その守備的な戦術を説明した。
「こうしたシステムは好きではないが、3人のディフェンダーで行く必要があった。選手たちが私の指示を理解してくれてよかった。私を信じてくれたんだ」
延長戦後半が終了した時点でスタジアムに駆け付けた多くのロシア人ファンが何かを成し遂げたように笑顔を浮かべていたように、世界最高峰のチームを相手に120分を戦い切ったことはそれだけで価値があったように感じられた。チェスチェソフ監督は「こんなに多くの優勝候補が脱落したことはなかった」とサプライズの多い今大会を好意的に捉えている。「これがフットボールというものだよ」
アキンフェエフも「素晴らしいワールドカップを過ごしているよ」と語る。ドイツやアルゼンチン、スペインといった国々のファンはともかく、ロシア嫌いのサッカーファンの多くも今はその言葉には共感できるのではないだろうか。
著者:マリオ・カワタ
ドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC
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