5月中旬に始まったイスラム教のラマダーン期(断食月)は、各国で多少の差はあるものの近く終わりを迎える。大多数がイスラム教徒で構成される7つのワールドカップ出場国は、通常日の出から日没まで断食をする必要があるこの期間にどのように対処したのだろうか。英紙『ガーディアン』の記事をもとに、それぞれの代表チームの方針を見てみよう。
サウジアラビア
開催国ロシアとの開幕戦はラマダーン終了前に行われる上、チームが拠点とするサンクトペテルブルクは日の出から日没までが18時間もあるため、そもそも中東とは全く環境が異なる。こうした事情を考慮し、サウジアラビアは旅を理由に大会後まで断食を延期することを決定している。旅は断食免除の有効な理由の一つであり国からも正式に延期を許可されているが、部分的な断食を行っている選手もいるという。
イラン
サウジアラビアとは違い、イラン代表には断食免除の特例は許されないようだ。ヘーレンフェーン所属のFWレザ・グーチャンネジャードは「ラマダーンはトレーニングに影響しない」と語り、ハッサン・ロウハーニー大統領も「心が神と共にあれば、魂は必要な強さを見つけることができる」と、信仰心の強さが心身の強化に繋がるとの考えを明らかにしている。モロッコとの初戦もラマダーン中に迎えることになる。
モロッコ
モロッコ代表は7ヶ国の中でも最も注意深いスタンスを取っており、国内での議論を避けるためかサッカー協会から宗教機関まで一切代表活動中のラマダーンについてコメントしてない。皮肉な見方をすれば、完全には断食を実行していないという事だろうか。イラン代表との初戦は両国ともにラマダーン中の対戦となる。
チュニジア
チュニジア代表はイスラム教の教えを守って断食を実行しており、選手からは「好きな時に飲食できないので、(W杯への)準備は非常に難しい」という不満の声も漏れている。日没後は飲食が可能になるため、先日のポルトガル代表との親善試合中には日没と同時にゴールキーパーが負傷を装って倒れこむシーンが見られた。この「時間稼ぎ」中にその他の選手たちはそろってベンチ前で栄養補給を行っている。
エジプト
栄養学の専門家を雇って断食の影響を最小限に留めようとしたエジプト代表の苦労は報われず、大会前の親善試合では一勝も挙げることができなかった。それでも当初はサッカー協会が最後まで断食を継続するとの声明を発表していたが、エジプトの最高宗教指導者が断食免除の許可を出したことで日中の飲食が可能になった。
ナイジェリア
完全なイスラム教国ではないナイジェリアは、一部のアフリカの国ほど難しい状況には置かれていない。それでもFWアーメド・ムサとDFシェフ・アブドゥラヒはイスラム教の教えを守って断食を実行しており、ドイツ人のゲルノト・ロー監督は「短期間で体力を回復するのは難しい」として、この2人を日曜日の初戦で起用しないことを明言している。
セネガル
国民の大多数をイスラム教徒が占めるセネガルも、ラマダーンへの対応を強いられている。自身もイスラム教徒であるアリウ・シセ監督はラマダーンと最高レベルのサッカーの両立が難しいと語り、「私には選手の健康に対する責任がある」と述べている。具体的な方針は明らかにされていないが、国内での報道によれば選手たちはW杯前に断食を行わないことを決めたという。
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