日本時間12日に行われた、パラグアイ代表とのW杯前最後の強化試合を4-2で勝利した日本代表。西野朗監督体制になってから初めての勝利をつかみ、日本時間19日に行われるW杯初戦のコロンビア戦に向けてあとはロシアへ向かうのみとなった。ここではこのパラグアイ戦で見えてきた5つのポイントを紹介する。
違いを生んだ乾貴士
この試合のマン・オブ・ザ・マッチは間違いなくこの男だろう。左サイドで先発した乾は前半こそチャンスを生み出せずに苦しんだものの、後半になるとそのクオリティをいかんなく発揮。2ゴールを決めた。酒井高徳との連携もよく。特に守備面で相手のビルドアップをけん制するポジショニングや、攻撃時の中央へ入っていくタイミング、香川真司とのコンビネーションも光った。間違いなく先発で使うべき選手だ。
香川真司の起用法
4-2-3-1のトップ下として先発した香川は、柴崎岳からの縦パスを引き出すポジションどりだけでなく、前線の他の3選手、乾、岡崎慎司、武藤嘉紀との相性も良く、守備時のプレッシングの連動性は期待を抱かせるものだった。チャンスを決めきれないシーンは散見されたが、そのチャンスの場面にしっかり顔を出していることはポジティブにとらえていいだろう。ボックス4-4-2の右サイドを務める時間帯があったもののやはり彼の良さが最大限生かされるのはトップ下であり、香川を起用するのであればそこ以外ない。もうひとつ、90分間プレーしきったことはコンディション面で心配されていただけに非常に明るい材料だ。
スイス戦と異なる守備
選手の意見を取り入れる傾向の強いと言われている西野監督。この試合ではスイス戦とは明らかに違う守備をしていた。具体的には、相手ペナルティサークル付近にファーストプレスをかける位置を設定し、1トップに入った岡崎が相手センターバックにプレスをかけ、サイドバックへのパスは武藤と乾が切る。ロングボールを蹴らせて植田直通が空中戦に勝ち、セカンドボールを周りの選手が回収する意図が観られた。もうひとつは、ミドルサードで自陣向きにボールを受けた相手に対して、激しいプレスをかけてボールを奪う意識も高かった。前線4枚の選手がそれを実行できるだけの守備力を備えていたこと、特に1トップの岡崎がそうしたプレッシングを得意にしている影響だろう。大迫投入後は勝ち越していたこともあったが、4-4-2にしてスイス戦に近い位置までプレス位置を下げていた。このことを考えれば、W杯本戦でも1トップの人選によって西野監督の狙いが見えてくるかもしれない。
先発GK交代の可能性
不安定なパフォーマンスに終始している川島永嗣は果たしてコロンビア戦のピッチに立っているだろうか。その可能性は今や半々と言っていいかもしれない。この試合で先発した東口順昭はクロスボールに対する判断ミスや、失点こそあったものの決して落第点のパフォーマンスではなかったし、中村航輔も最後の失点を除けば非常に安定したパフォーマンスを披露していた。川島自身がそうであったように、控えとされていたゴールキーパーがW杯本番で先発に抜擢される可能性は大いにある。現時点での出来から判断して筆者は中村航輔を先発に推薦したい。
西野朗監督の采配
西野監督体制になってからの3試合はそれぞれ全く異なったシステム、戦術を用いていた。ガーナ戦では3バックシステムをベースにした戦いを披露し、スイス戦では4-2-3-1をベースに低めの守備ブロックを形成してカウンターに近い攻撃を展開。このパラグアイ戦ではコンディション面で不安を抱えていた選手たちを起用して、高い位置からプレッシングを仕掛けるアグレッシブな守備をベースに、サイドバックを高い位置に押し上げながら、ペナルティエリアへドリブルで侵入していくスタイルを多く見せた。
全く違うことを3試合ともしていたようだが、この3試合で共通していたことがあった。それは選手によって守備の方法が変わること。宇佐美と原口は相手サイドバックについていく守備を続けていたのに対し、乾と武藤、そして岡崎はよりゾーンでケアしていた。大迫が1トップの時のプレス位置は低めで、岡崎や武藤が務めた時はより高くなる。これが西野監督の指示によるものなのか、選手個人の判断によるものなのかはわからないが、本番でもこの傾向はみられるかもしれない。そうなると、様々な可能性を持っていたとしても先発が分かった時点で、相手に対応されるだろう。この3試合で見えたことは、各選手にできない要求はしない、ということだ。その選手ができる守備方法、ポジションでプレーさせることが予想される。
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