アジア ワールドカップ

W杯で伝説的なゴールを決めた“砂漠のマラドーナ”オワイラン

著者:ディディエウ(翻訳者:マリオ・カワタ)

 キャプテン翼に登場するマーク・オワイランというキャラクターをご存じだろうか。王族出身という設定のサウジアラビア代表DFは完全なフィクションではなく、作者の高橋陽一氏がモデルとしたのが同国の実在の選手サイード・オワイランだ。

 オワイランはサウジアラビアの多くの人々が憧れるレジェンドであり、それにふさわしい功績を誇る。彼は世界的に有名になった同国初の選手であり、歴史的な偉業によりサウジアラビアサッカーの象徴となった。

 最も有名なのは1994年ワールドカップ、ベルギー戦のゴールだ。初出場だったサウジアラビア代表は、ベルギーを下して彼らをグループ3位に落としたことで人々に衝撃を与えた。オワイランはその試合唯一の得点を、鮮烈な形で決めて見せた。中盤からドリブルを開始すると、何人もの相手選手を抜き去ってミシェル・プロドームからゴールを奪ったのだ。

 現在もサウジアラビアではサッカーファンだけでなく、普段はサッカーに興味のない人でもこのゴールを覚えている。その驚異的なプレーにより、ファンはオワイランを「砂漠のマラドーナ」と呼んでいる。

 オワイランが多くの人々から愛されるもう一つの理由が、彼の忠誠心だ。サウジアラビアでは忠誠心の強いスポーツ選手が尊敬を集めるが、オワイランは1988年にアル・シャバブでキャリアをスタートし、2001年に引退するまでそこでプレーした。弱冠20歳の時にチームを初のリーグ優勝に導くと、アル・シャバブでのキャリアを通じてサウジ・プレミアリーグ、クラウン・プリンスカップ、アラブ・チャンピオンズリーグ、そしてガルフ・クラブ・チャンピオンズカップの4大タイトルを手にしている。

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