新監督には、監督を評価する立場だった西野朗技術委員長が就任した。言わずと知れたガンバ大阪の黄金時代を築いた指揮官であり、1996年アトランタオリンピックで代表チームを率いた経験があるのは大きなアドバンテージだ。ヴィッセル神戸、名古屋グランパスでは期待に沿う成績を残すことはできなかったが、今回のミッションは長期的なチーム作りとは全く異なる。2ヶ月間しか残された時間がない中でやれることは限られており、当然ながら最盛期のガンバ大阪のような攻撃的で見るものを楽しませるサッカーは期待できないし、目指すべきでもない。
青写真とすべきなのは、岡田武史監督の率いた2010年ワールドカップの戦い方だろう。当初掲げたコンセプトがうまく機能せず春の親善試合でも惨敗していた岡田ジャパンは、大会直前により守備に重点を置いた戦術にシフトし成功を収めた。同様にタレント軍団を相手に辛抱強く戦いワンチャンスを活かした「マイアミの奇跡」の再現こそが、西野監督には期待される。
現時点で選手選考について予想するのは難しいが、今から大幅な入れ替えを行うことはまずあり得ない。既にチームには長谷部誠、川島永嗣らチームの精神的な軸となる選手が存在するが、サプライズとして可能性があるとすれば危機的な状況を考慮して、経験豊富なベテランの力を借りることだろう。またこれまでハリルジャパンをスカウティングしてきた対戦国にとっては、ここでの監督交代は大幅な選手の入れ替えがなくても日本対策が難しくなることを意味している。
西野監督の下、日本代表がワールドカップで勝ち星をあげるためには、まずはこの決断を下した日本サッカー協会のこれまで以上の全面的なサポートが必要だ。そしてどんな結果になろうとも、大会後には過去3年間のハリルホジッチ監督招聘から解任までのプロセスを徹底的に分析、評価する必要があるだろう。もしショック療法により日本代表が成功を収めたとしても、大会直前の監督交代は今後決して繰り返されるべきではない。
著者:マリオ・カワタ
ドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC
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