Jリーグ 横浜F・マリノス

横浜F・マリノス、伝統的堅守から攻撃的フットボールへ。革新的な戦術で挑む”神奈川ダービー”

ビルドアップ時の陣形 写真:FootballTribe

『偽SB』
 フットボールのヘビーウォッチャーでなければ、マリノスの両SBの位置どりは奇妙に映るはずだ。ここまで極端に『偽SB』の戦術を本格的に導入したのはおそらくJリーグで初めてだろう。

 『偽SB』はCFG(シティ・フットボール・グループ)のトップに君臨するマンチェスター・シティ指揮官ジョゼップ・グアルディオラ監督から派生した戦術だ。SBがビルドアップの局面でタッチライン際に開かずに中央寄りにポジションをとり、インサイドハーフのように振る舞う。偽SBを採用するメリットは主に以下の5つが考えられる。

①中盤の数的優位を確保する
②ウインガーへのパスコースを創り出す
③ビルドアップが苦手なCBの負担を減らせる
④攻守の切り替えを迅速に遂行できる
⑤SBが内側から攻撃参加することでマークに付きづらい

 ビルドアップ時の陣形は上図の通りとなる。開幕節セレッソ大阪戦と第2節柏レイソル戦は、ビルドアップ時に1-2-3-2-2-1の陣形を採用した。GK飯倉大樹、CBの中澤佑二、ミロシュ・デゲネク、そしてアンカーの喜田拓也が加わり四角形を形成(オレンジ)。間のスペースに偽SBとインサイドハーフが降りる。両ウイングはピッチ幅いっぱいにポジションをとり上下動(青)、センターフォワードは両CBを牽制する位置どりをとっている(赤)。(図)

 SBのスタートポジションが変わったことで、最も恩恵を受けたのは左SBを務める山中亮輔だ。両ウイングの外側を斜めから追い越すオーバーラップ、相手CBとSBの間を突くインナーラップで黄色のゾーンを突く。守備側にとっては、サイドバックのマークを受け渡しづらくなり、かなり厄介だ。さらに、清水エスパルス戦で見せたように試合終盤までスプリントを繰り返されれば、対峙するDFにとってはこの上ない恐怖だろう。(清水エスパルス戦ではリーグ7位タイとなるスプリント数35回を記録している)

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