5. ビデオ・オペレーション・ルーム
スタジアム内に設置(国や会場によって異なる)されたビデオ・オペレーション・ルーム(VOR)でVARは試合の見直しを行う。VORには4つのベストなアングルからライブ映像が流れるモニターとその他のアングルから撮影された映像が流れるモニター、そして3秒ほど遅れた映像が流れるモニターが用意されている。VORにはVARとリプレイオペレーター、アシスタントVARが常駐している。
6. VARが判定する範囲
VARは「ゴール」、あるいは「PK」に繋がった攻撃の起点にまでさかのぼってジャッジを下すことができる。これには、「攻撃側がどのようにボールを奪取したか」という点まで含まれる。すなわち、ボール奪取時にファールなどがあった場合はゴールやPKを取り消せるということだ。主審は通常のスピードとスローモーションの映像で見直しを行うことができる。主観的な判断を見直す場合(ハンドが故意だったか?など)は通常スピードの映像で見直しが行われ、スローモーションの映像は事実確認(ハンドかハンドじゃないかなど)を行うときに使用される。
7. VARがもたらした結果
すでに、世界中のトップリーグ972試合で導入されているVAR。ベルギーの大学が分析した結果、以上のことが分かっている。3試合に1試合の割合で見直しが行われる。70%の試合でVARによる介入が行われなかった。15%の試合で1回の介入が行われた。明らかな誤審の精度は99%まで向上。1試合平均で55秒間の遅延が発生している。W杯やチャンピオンズリーグではフリーキックで9分間、スローインで7分間、ゴールキックで5分間、コーナーキックで4分間、選手交代で3分間失われていることから、VARが特別試合を遅らせるというわけではないようだ。
まとめ
VARは多くの選手の行動やプレースタイルを変える可能性を持っている。シミュレーションは正しく罰せられ、試合中の暴力行為や不正行為も激減するだろう。試合の不正操作はさらに難しいものとなる。「VARは正しく使えば主審の最大の味方。そして、ゲームの最大の味方になる」とDavid Ellerray氏は語る。すでにVARが導入されているリーグでは、文化としてVARが受け入れられている地域もある。VARが当たり前の存在になる日は、すぐそこに迫っている。
取材・文:菊池大将/Dan Orlowitz
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