90年代にドイツ代表として活躍したマティアス・ザマー氏が、ドイツ紙「シュポルト・ビルト」に旧東ドイツ時代に秘密警察に所属していた過去を告白した。
ドレスデン出身のザマー氏は、ドイツ代表の一員として1996年の欧州選手権を制覇。同年にバロンドールを受賞すると、その翌年にはドルトムントのチャンピオンズリーグ優勝に貢献している。引退後もドルトムントを監督としてブンデスリーガ優勝に導くなど輝かしいキャリアを誇るが、旧東ドイツで過ごした若手時代には知られざる過去があったようだ。
「ビルト」によるとザマー氏はディナモ・ドレスデン時代の1987年から3年間、シュタージ(国家保安省、旧東ドイツの秘密警察)のフェリックス・ジェルジンスキー衛兵連隊に所属していたという。シュタージは共産圏の多くの秘密警察と同様、市民の監視や他国での諜報活動を行い恐れられていた。
「ディナモの選手は主に衛兵連隊に配置されていた。知っておいて欲しいのは、当時のクラブのボスはエーリッヒ・ミールケ(東ドイツ国家保安大臣)だったということだ」
「ディナモ・ドレスデンでプレーするには、まず人民警察に入らなければいけなかった。そして徴兵の時期がきたら、サッカーを続けるために軍の組織に所属する必要があったんだ」
同時にザマー氏は、秘密警察への所属は実際に軍の活動に参加しないためのアリバイであり、
拒否していれば引退に追い込まれていたと弁明している。
「もし拒否していたら普通の軍隊に行く必要があり、ディナモ・ドレスデンには残れなかっただろう」
ザマー氏はその後、ドイツが再統一された1990年にシュトゥットガルトへ移籍。同年には統一ドイツ代表でのデビューも果たしている。才能あふれるサッカー選手さえ秘密警察に所属せざるを得なかった事実は、当時の時代背景を物語っていると言えるだろう。
「逃れることのできない制約があった。もちろんそれは間違った体制の一部だったわけだが、私には選択の余地はなかったんだ」
コメントランキング