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乾貴士は途中交代で逆に際立った“存在価値”。リーガ3年目で迎える最大の苦境は成長への布石に【MatchSTORY】

 エイバルと乾貴士にとってまさに悪夢のような1週間だった。リーグ戦2試合で合計10失点。乾もチームの不調に引きずられる形で前半38分に途中交代を命じられている。昨季躍進を遂げたエイバルに一体何が起きているのか。

 エイバルが抱える一番の問題は攻撃のバリエーションが乏しいことだ。怪我で長期離脱している絶対的司令塔ペドロ・レオンの抜けた穴が全く埋まっていない。昨季のレオンは右サイドで起点を作りSBとの連携からチャンスを創出。味方を生かしチーム全体を旋回させるプレーを見せていた。

 今季は未だ右SHが日替わりで変わる状況になっており、ボールがスムーズに回らない。 24日のセルタ戦、右SHで出場したのは元ポルトガル代表FWべべ。恵まれた体躯を生かした強引な突破で随所に光るプレーを見せたが、一つ一つのプレーが単発で終わる傾向にある。特に右SBアンデル・カパとの連携が悪く、ボールを受けるタイミングが全く合わないのは重大な問題だ。

 逆サイドの乾はその負担を受けている。昨季はレオンが右でタメを作り、ワイドに開いた乾がスペースがある状況でボールを受けるパターンがチームとして確立されていたが、現在のエイバルにはボールの”落ち着きどころ”がなく乾が前を向いてボールを受けることのできる場面は少ない。

 乾は前半38分に途中交代となったが、エイバルの武器であるサイドチェンジを引き出すためボランチへのバックパスを多用していた。プレーが消極的に見えたことが監督に交代を決断させた理由だろう。しかし、乾の交代によってチームはますます攻め手を失った。

 メンディリバル監督は試合後に「何かを変えなければいけなかった。彼のサイドから攻撃を仕掛けられていなかったし、乾を下げることが最善だと考えた。それが正解だったとは感じていない。(交代後)大きな変化があったわけではなかったからね」と述べ、皮肉にも途中交代したことによって存在価値が改めて示された形となった。

 乾にとって苦境の時だ。チーム事情で以前より組み立てに関わる役割が増え、以前よりもスペースがない状態でボールを受けることを余儀なくされている。ただ、今シーズンは縦への突破のみならずカットインから積極的にシュートを狙うなどプレーの幅の広がった。よりクロスやシュートの精度を高める必要こそあるものの、着実にレベルアップしている印象のある乾。この苦境を乗り越えた時、世界トップレベルの選手が集まるリーガの中でも圧倒的な存在感を示す選手になり得るだろう。