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乾貴士、スペイン移籍3年目で確かな成長の跡。“闘う集団”エイバルで抜群の存在感を放つ存在に【MatchSTORY】

 エイバルに移籍して3年目となる乾貴士。今年は開幕戦から2試合連続先発出場を飾り、レギュラー争いを一歩リードしている。

 チームの基本戦術は昨季と変化はない。2015年から指揮を執る名将ホセ・ルイス・メンディリバルはチームに”闘う姿勢”を植え付けた。バスク人特有の強さを前面に押し出し、粘り強い前線からの守備で勝ち点をもぎ取る。そのスタイルはもはやチームのアイデンティティとなっている。

 そんな”闘う集団”に所属する乾貴士は、体格のハンデを感じさせないスマートな守りで指揮官の戦術を完遂。チーム内からの信頼を勝ち取っている。

 エイバルの守備の特徴は相手サイドバックにボールが渡ったとき顕著に現れる。乾ら両SHはボールの位置に合わせ、相手CBとSBの間にポジションをとる。CB間のパスをけん制しながら、SBに入った瞬間に猛烈なプレスバック。味方ボランチやSBと連携してボールを奪い切る。

 チームから求められるこの守備強度は同ポジションのライバル、べべやルベン・ペーニャに比べ明らかに優れており、左サイドの封鎖に大きく貢献している。メンディリバル監督が「チーム戦術を最も理解している選手のうちの一人」と乾の守備力に高い評価を与えていることが証左であろう。

 昨シーズン攻撃の全権を担っていたMFペドロ・レオンが膝の怪我で10月まで戦線離脱。エイバル加入から3年連続でリーグ全試合出場中の”不動のエース”セルジ・エンリクも万全のコンディションではない中、乾にかかる期待は大きい。

 右サイドのペドロ・レオンが不在であるため、乾が左サイドで起点を作るシーンが増えた。ボールをテンポ良く旋回させ、流れを生み出しており”闘うタイプ”が多いチームで存在感を示している。

 開幕節のマラガ戦では左からのクロスで幾度となく好機を演出。地元紙が選ぶ最高評価の選手となっている。つづくアスレティック・ビルバオ戦では決定的な仕事こそできなかったが、安定したプレーを見せていた。両試合とも積極的にシュートを打ち、メンディリバル監督から要求された”エゴを出す姿勢”を体現している点も評価に値するだろう。

 現在はレギュラーを確保している乾だが、チームには強力なライバルが控えている。今季から背番号10に変更し、クラブから大きな期待を寄せられているべべ。抜群の身体能力を誇る新加入の22歳アレホ。サイドバック出身で1対1の守備に強いルベン・ペーニャ。常に競争を求めるメンディリバル監督は必ず全員にチャンスを与えるはずだ。

 1年通してレギュラーとして活躍するためには、昨季よりも多くの得点・アシストが求められる。この高いハードルを超えれば乾には新しいステージが待っているはずだ。