パリ2024オリンピック(パリ五輪)のサッカー女子グループステージ第1節が、現地時間7月25日に行われた。グループCのなでしこジャパンこと日本女子代表は、同組のスペイン女子代表と対戦。最終スコア1-2で敗れている。
前半13分にMF藤野あおばがフリーキックで先制ゴールを挙げたものの、逆転負けを喫したなでしこジャパン。試合全体を通じ守勢に回る時間が長かった。
同代表が試合を掌握しきれなかった原因は何か。ここではスペイン女子代表戦を振り返るとともに、この点を中心に論評していく。
なでしこが逃した好機
キックオフ直後の両チームの基本布陣は、なでしこジャパンが[4-4-2]でスペイン女子代表が[4-1-2-3]。最終ラインから丁寧にパスを回すスペイン女子代表に対し、なでしこジャパンがFW田中美南と藤野の2トップを起点とする守備で応戦した。
前半2分、スペイン女子代表が自陣右サイドから左サイドへボールを運ぶと、DFライア・アレクサンドリ(センターバック)の中途半端な縦パスをMF宮澤ひなた(右サイドハーフ)がカット。その後宮澤から田中にボールが渡り、田中のラストパスを受けた藤野が相手GKカタ・コルを強襲するシュートを放つ。相手GKと1対1の構図を作れただけに、このチャンスは物にしたかった。
詰めが甘かったなでしこの守備
試合序盤のビッグチャンスを逃してからも、なでしこジャパンは2トップを起点とする守備で、スペイン女子代表の自陣後方からのパス回し(ビルドアップ)を封じにかかる。
前半4分には藤野がDFイレネ・パレデス(センターバック)にプレスをかけ、スペイン女子代表のビルドアップを右サイドへ追いやる。その後パレデスからタッチライン際のDFオナ・バトル(右サイドバック)にパスが繋がり、なでしこジャパンとしてはボールを奪える絶好の場面だったが、同代表DF古賀塔子(左サイドバック)がDFバトルのサポートに赴いたFWアテネア・デルカスティージョを捕捉しきれていなかったため、ここにボールが渡ってしまう。これに加え、MF清家貴子(左サイドハーフ)もデルカスティージョのリターンパスを受けたDFバトルに振り切られてしまったため、なでしこジャパンは左サイドを突破されたうえピンチを迎えた。
[4-4-2]の守備隊形から相手のビルドアップを片方のサイドへ誘導する意図は窺えたものの、この守備の連動性の低さが表れてしまったワンシーンだった。
バリエーション豊かなスペインの攻撃
なでしこジャパンの守備原則を察知したのか、スペイン女子代表は右サイドバックのバトルがビルドアップ時にタッチライン際から内側へポジションを移し、中央とサイドどちらにもパスを出せる状況を作る。これに加え、中盤の底を務めたMFパトリ・ギハーロも適宜味方2センターバック間へ入り、なでしこジャパンの2トップとの数的優位(3対2)を確保。スペイン女子代表の2インサイドハーフ、アイタナ・ボンマティとアレクシア・プテジャスの両MFもなでしこジャパンの2トップや中盤ラインの背後から顔を出し、自軍のビルドアップを活性化させた。
特にボンマティとプテジャスの2インサイドハーフに対するなでしこジャパンの守備が曖昧で、長谷川唯と長野風花の両MF(2ボランチ)、清家と宮澤の両サイドハーフどちらもスペイン女子代表2インサイドハーフを捕捉しきれず。中央封鎖から相手のビルドアップを片方のサイドへ追いやるのであれば、両サイドハーフが内側に絞る守備隊形(図1と図2)を敷き、清家と宮澤にスペイン女子代表インサイドハーフや中盤の底ギハーロのマークを担わせる戦法が望ましかったが、この形も見られなかった。
苦境のなでしこがフリーキックを物に
守備の最適解を見つけられないなでしこジャパンはスペイン女子代表にボールを保持されたが、ワンチャンスを物にする。前半11分、DF南萌華(センターバック)が自陣からロングパスを繰り出すと、藤野に寄せられた相手GKコルがこのボールをクリアしきれず。ペナルティエリア手前のこぼれ球に田中が反応すると、同選手がギハーロのファウルを誘う。この反則で得たフリーキックを藤野が結実させた。
相手最終ラインの背後を突いた藤野と、この動き出しをしっかり見ていた南の正確なパス。この2人が苦境のなでしこジャパンに活力をもたらした。
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