EURO ドイツ代表

ドイツ代表クロース、現役最後の気合が召喚したものは【ユーロ2024】

トニ・クロース 写真:Getty Images

ドイツ代表MFトニ・クロース(レアル・マドリード)は、引退宣言をしてUEFA欧州選手権(ユーロ2024)に臨んだ。ノックアウトステージで敗れれば、それが現役最後の試合になることを意味していた。優勝してクロースのために現役引退の花道を作ることを目指していたドイツだったが、実際には準々決勝で1-2でスペイン代表に敗れ、8強でユーロを去ることになった。

試合前にはスペイン側が、この試合がクロースの現役最後の試合になると宣言していたが、それが現実となってしまった。前哨戦もあってかクロースはこの試合で並々ならぬ気合の入りようだったが、奇しくもこれがクロースの引退を早める要因になってしまったのである。

ここではユーロ2024準々決勝ドイツ対スペインにおける現役最後のクロースの気合の様を振り返ろう。


ルイス・デ・ラ・フエンテ監督(左)ペドリ(右)写真:Getty Images

立ち上がり早々にペドリに強烈タックル

クロースはドイツの守備的MFとして先発した。試合4分に早速、左足で強烈なタックルをすると、スペインのMFペドリ(バルセロナ)は膝が歪み宙を舞い回転しながら落下する。やがてペドリは立ち上がれなくなり、8分にFWダニ・オルモ(ライプツィヒ)と交代して退いた。ファウルにはなったが、クロースにはイエローカードも提示されずにスペインは早々と交代枠を使った。

67分には、オルモが裏に走り込み突破をはかると、クロースが手で掴んで今度はイエローカードが提示された。アディショナルタイムに入ってからは自陣ペナルティエリアの目前で、明らかにスペイン選手の臀部にニーパッドを食らわせたのだが、ノーファウルだった。

得点機で、まったくボールと関係ない部位に強くタックルしているためイエローカードもありえそうなシーンだったが、スペインの選手はなかなか倒れなかった。もしイエローカードなら2枚目で退場になるところだ。ドイツのホームであり、クロースの最後の試合になる可能性がある。笛を吹くプレッシャーも並大抵ではないだろう。審判も人の子だ。


トニ・クロース 写真:Getty Images

けいれんで度々試合が中断

延長戦に入って数分後、クロースは脚がけいれんして倒れ込んで、なかなか立ち上がれない。しかし、ドイツはすでに交代枠を使い切っており、皆に促されてどうにか立ち上がる。112分にクロースは、再びけいれんでピッチに倒れ込んだ。

しかし、スペインの選手もドイツの選手も怒るような素振りはない。敵と味方に分かれて真剣勝負をしながらも、クロースという偉大な一人の選手の往生に最大限のリスペクトを払っていた。

クロースは自分の現役最後になるかもしれないこの試合で、最初から飛ばしていた。延長戦はまったく計算に入れていなかったのだ。34歳のベテランらしくないが、ペース配分しないで燃え尽きることだけを考えていたのだろう。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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