
2026シーズンの百年構想リーグ開幕(2月7日)を前に、複数のJ1クラブでキャプテン交代の動きが相次いだ。単なる世代交代や形式的な人事変更と見る向きもある。しかし、その背景を掘り下げると、チーム改革や戦力流出対策といった、より戦略的な意図が浮かび上がる。
主将人事は、単なる「腕章の行方」ではない。監督の哲学、クラブの方向性、さらには選手市場の動向までも反映する重要なメッセージである。ここでは、キャプテン交代に踏み切ったクラブと継続を選択したクラブの事例を整理し、その決断の裏側にある思惑を読み解いていく。
浦和:スコルジャ体制4年目の“象徴的交代”
2026シーズンに向け、キャプテンを交代させた代表例が浦和レッズだ。2月1日の新体制発表会見で、FC東京から加入して3年目を迎えるMF渡邊凌磨の新主将就任が発表された。2025シーズンはリーグ戦29試合に出場し7得点。中盤から前線までこなす運動量と推進力は、チームの攻守両面を支えてきた。
前任者はMF関根貴大。2024年7月から腕章を巻き、苦しい局面でも献身的にチームをまとめてきた。この交代は関根の評価を下げるものではない。むしろ、4年目に突入するマチェイ・スコルジャ体制の停滞感を払拭するための“象徴的なスイッチ”と見るべきだろう。
渡邊は就任に際し「大きな責任と誇りを感じています」と語り、スコルジャ監督も「チームに新しい活力を注入するため」と説明した。ピッチ上での影響力の大きさに加え、年齢的にも中堅に差しかかった渡邊を据えることで、世代間の橋渡し役を担わせる狙いもあるはずだ。主将交代は単なる形式変更ではなく、スコルジャ体制が“次の段階”へ進むためのメッセージでもある。
横浜FM・鹿島:変えないという決断
対照的に、あえてキャプテンを「変えない」という選択をしたクラブも少なくない。横浜F・マリノスでは、MF喜田拓也が8シーズン連続で主将を務めることになった。1993年のJリーグ開幕以降、同一クラブでの最長継続記録であり、その事実だけでもクラブからの絶対的信頼がうかがえる。
昨季、横浜FMは一時降格圏に沈むなど苦しい戦いを強いられたが、最終的にはJ1残留を果たした。その過程で精神的支柱となったのが喜田だった。副主将人事も据え置きとされ、クラブはリーダーシップ体制の安定を最優先した形だ。変化よりも継続。そこには、混乱を経験したからこそ得た「軸をぶらさない」という判断がある。
昨季王者の鹿島アントラーズも同様だ。MF柴崎岳が主将を続投し、副主将4人体制も維持された。連覇を目指すうえで、組織の骨格を動かさないことは理にかなっている。鹿島は伝統的に役割分担を明確にし、ピッチ内外の統制を重視するクラブだ。主将継続は、その文化を体現する決断と言える。
さらに町田ゼルビアでは、DF昌子源が選手間投票による「キャプテン総選挙」で再任された。これはクラブ主導ではなく、チーム内部の総意としての継続であり、組織の成熟度を示す象徴的な事例だろう。
キャプテンを変えないという選択は、停滞ではない。むしろ、現在の体制に対する自信の表れだ。伝統やアイデンティティを守ることが、結果として競争力の維持につながる。横浜FMと鹿島の判断は、その思想を色濃く映している。
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