
法的には問題ないのか:会社法と税務の視点
この貸付が会社法上の「利益相反取引」に該当するかどうかは、重要な論点だ。会社法第356条では、取締役が自己または第三者の利益のために会社と取引を行う場合、取締役会などの承認を求めている。親会社と子会社の取引は、子会社側の取締役が親会社の利益を優先する恐れがあるため、利益相反と評価される余地がある。
もっとも、湘南はRIZAPグループの連結子会社であり、株主構成や支配関係を踏まえると、形式的には取締役会決議を経ることで適法と解釈される可能性が高い。RIZAP側も、取締役会で決議し、監査役と協議の上で行ったと説明しており、直ちに違法と断定することは難しい。
税務上も、無利息での資金移動は寄附金認定のリスクがあるが、利息を設定している以上、その点は回避されている。ただし、法的にグレーではないからといって、社会的・倫理的な批判が免責されるわけではない。
Jリーグクラブとしての「適切性」
より本質的な問題は、Jリーグクラブとしてこの資金運用が適切だったのかという点だ。Jリーグのクラブライセンス制度は、財務の健全性とクラブの自立性を重視している。表面的には追加投資によって債務超過を回避し、ライセンスを維持したとしても、その直後に多額の資金が親会社へ流れていたのであれば、「見せかけの健全化」と受け取られても仕方がない。
実際、湘南の臨時評議会などでは、親会社への不信感が示されたと報じられている。選手売却を前提とした経営や、短期的な資金繰りを優先する姿勢が、クラブの長期的な安定を損なうのではないかという懸念も根強い。
“裏技”か“禁じ手”か:問われるのは姿勢
この6億円貸付は、法令違反と断じられる可能性は高くない。しかし、Jクラブが地域社会に根差した「公共財」であることを踏まえれば、その資金が親会社の都合で動かされたと受け取られる行為は、極めてリスクが高い。
過去を振り返れば、親会社依存がクラブ経営を揺るがした例は枚挙にいとまがない。湘南にとっても、1999年の経営危機の記憶は決して遠い過去ではない。
RIZAP側が本当に「クラブのため」だったと主張するのであれば、今後はより詳細な財務情報の開示と、説明責任を果たす姿勢が不可欠だろう。それができなければ、この貸付は“裏技”ではなく、“禁じ手”だったと評価されても致し方あるまい。
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